近隣住民でも知らない者がいた岩手の秘境「猊鼻渓」
明治以前より絶対の秘境として、近くに住む者でさえ知らないこともあったとされる猊鼻渓は、岩手県で最初の国の名勝(1923年)に指定されました。
石灰岩を浸食されてできた、およそ100mの断崖が両岸にそびえる約2kmの渓谷です。
猊鼻渓という名は、この地の開拓に私財を投じた功労者である佐藤猊巌(さとうげいがん)をはじめとした、地元有志によって命名されたものです。舟下りの折り返し点となる攬勝丘の対岸にそびえる大岸壁に突き出た「獅子(猊)ヶ鼻」が、その名の由来となっています。現在では東の耶馬渓(大分県)とうたわれるまでになっています。
世にも稀なる此の景色…と歌われる奇岩の数々を巡る舟下り
澄んだ川の流れを手漕ぎ舟で行う舟下りでは、船頭が棹一本で船をあやつり、「猊鼻追分」を唄うのが名物となっています。日本の観光地では珍しく、船は川を遡る方向に進みます。大人数が乗船する際に船頭2人体勢となる時、このくだりを説明し、「1人で船を漕いで歌うのはとても疲れるから、船頭2人体制です」と言って笑いを誘うのが定番となっています。
木々が色づく紅葉の季節はもちろんのこと、山水画のような風情を漂わせる雪の季節、新緑の季節、四季折々すべての風景が絵になります。とりわけ断崖に紫色の花を咲かせる藤の花が咲く春が一番の見どころで、名所として有名です。清流沿いの藤岩には色鮮やかな藤の房が幾重にも垂れ下がり、猊鼻岩に向かう途中には藤棚が設けられています。
季節の風景のほかに、春と秋のシーズンには茶席舟が登場し、雅な舟上茶会を楽しめます。冬にはこたつ舟となり、あたたかな舟上で鍋や釜飯に舌鼓を打ちながら雪景を満喫できます。
舟下りの折り返し地点では、岩のくぼみに素焼きの運玉と呼ばれる玉を投げ入れることも名物となっています。福、緑、寿、愛、願、運、忠と7種類の文字が書かれた運玉が販売されています。好みの文字が書かれた運玉を選んで投げ、上手く岩のくぼみに運玉が入れば願い叶うと言われているようです。
同じ岩手県一関市内には、市内隋一の観光地である厳美渓があり、こちらと両方を巡る観光客も多くなっています。
INFORMATION
名称 | 猊鼻渓 |
所在地 | 〒029-0302 岩手県一関市東山町長坂町467 |
電話番号 | 0191-47-2341 |
公式URL | http://www.geibikei.co.jp/ |
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