
近隣住民でも知らない者がいた一関市の秘境「猊鼻渓」【岩手県】
猊鼻渓(げいびけい)は、岩手県一関市東山町に位置する、砂鉄川中流に広がる約2kmの渓谷で、明治以前には近くに住む者でさえ知らないこともあったとされる秘境でした。
1925年には国の「史跡名勝天然記念物」に指定され、1927年には「日本百景」にも選ばれました 。
猊鼻渓という名は、この地の開拓に私財を投じた功労者である佐藤猊巌(さとうげいがん)をはじめとした、地元有志によって命名されたもので、舟下りの折り返し点となる攬勝丘の対岸にそびえる大岸壁に突き出た「獅子(猊)ヶ鼻」が、その名の由来となっています。
世にも稀なる此の景色…と歌われる奇岩の数々を巡る舟下り

猊鼻渓の名物である舟下りは、船頭が一本の竿で舟を操りながら、渓谷の景観や地元の伝説を紹介してくれる約90分の旅です。春の藤の花、夏の新緑、秋の紅葉、冬の雪景色と、四季折々の美しさを楽しめます。舟下りの途中では、船頭が「猊鼻追分」と呼ばれる民謡を披露し、その歌声が渓谷に響き渡ります。
奇岩と名所
渓谷内には「大猊鼻岩」「鏡明岩」「獅子ヶ鼻」「錦壁岩」など、名前と形状に特徴のある岩が点在しています。特に「獅子ヶ鼻」は、獅子の鼻のような形をしており、猊鼻渓の名前の由来となっています。
6つの鍾乳洞と四季折々の風景
右岸には6つの鍾乳洞があり、その中でも「毘沙門窟」は幅5メートル、奥行き30メートルの規模を誇ります。洞内には毘沙門天が祀られており、神秘的な雰囲気を醸し出しています。

木々が色づく紅葉の季節はもちろんのこと、山水画のような風情を漂わせる雪の季節、新緑の季節、四季折々すべての風景が絵になりますが、断崖に紫色の藤の花が咲く春が一番の見どころです。清流沿いの藤岩には色鮮やかな藤の房が幾重にも垂れ下がり、猊鼻岩に向かう途中には藤棚が設けられています。

季節の風景のほかに、春と秋のシーズンには茶席舟が登場し、雅な舟上茶会を楽しめます。冬にはこたつ舟となり、あたたかな舟上で鍋や釜飯に舌鼓を打ちながら雪景を満喫できます。

舟下りの折り返し地点では、岩のくぼみに素焼きの運玉と呼ばれる玉を投げ入れることも名物となっています。福、緑、寿、愛、願、運、忠と7種類の文字が書かれた運玉が販売されています。好みの文字が書かれた運玉を選んで投げ、上手く岩のくぼみに運玉が入れば願い叶うと言われているようです。
同じ岩手県一関市内には、市内隋一の観光地である厳美渓があり、こちらと合わせて巡る観光客も多くなっています。
猊鼻渓<Information>
- 名 称:猊鼻渓
- 住 所:〒029-0302 岩手県一関市東山町長坂町467
- 電話番号:0191-47-2341
- 公式URL:http://www.geibikei.co.jp/