【福島県浪江町】伝統工芸「大堀相馬焼」とは?人々を魅せ続ける機能美と復活ストーリーを紹介

皆様は「大堀相馬焼」をご存じでしょうか?福島県双葉郡浪江町で受け継がれてきた陶器です。細かいひびわれが入れられた青みを帯びたグリーンの地色に、颯爽と駆ける馬の姿の絵柄。見た目の美しさにあわせて、高い機能性をもつ伝統工芸です。東日本大震災によって一時は伝統が途絶えてしまうのではないかと存続が危ぶまれましたが、職人や大堀相馬焼ファンの努力と熱意によって、今日も技術が受け継がれています。

今回は大堀相馬焼をテーマに、歴史や魅力、そして現在の姿を深掘りしてお伝えします。


大堀相馬焼とはどんなもの?

馬に乗れば唄心」。これは、馬に乗っている時は、気分が良くてついつい歌を口ずさんでしまうという言葉です。馬は生活のパートナーであり、時には吉事の象徴でした。福島県の伝統工芸として名高い大堀相馬焼も、馬をモチーフとした絵付けがされています。

大堀相馬焼は、3つの特徴をもちます。

  • 青ひび
  • 駒絵
  • 二重焼

青ひびとは、器の表面に広がる細かい「ひびわれ模様」のことです。大堀相馬焼の代表色といえば、緑がかった青色。これは、鉄分を含んだ釉薬を主に使うためです。「ひびわれ模様」は、焼き上げた陶器を冷ます過程で発生します。器に青ひびが入るときに鳴る「貫入音」は、風鈴のような美しい音です。ひびには墨が塗り込まれ、より美しく際立つ模様となります。

走り駒の模様も特徴的です。福島県浜通り北部では、伝統行事「相馬野馬追」など、馬にまつわるアレコレが多くあります。これは藩主・相馬氏の家紋が「繋ぎ馬」だったことや、相馬中村藩の治世時代に農耕馬を訓練して戦に出して民を守ったことなどが由来するようです。力強く駆ける馬の姿は、武運や家内安全を願う縁起物として喜ばれていました。

二重焼とは、その名の通り、器の層を二重にして焼くことです。ろくろで成形する際に、外側になる器と内側になる器をつくり、焼成前にはめ合わせます。そのため、内側と外側の間に空気の層が発生し、保温性が高まります。中の飲み物の温度が変わりにくく、熱さが手に伝わりません。魔法瓶と同じ構造ですね。この二重焼は国内の伝統工芸としては大変珍しい技法で、熟練の技が必要です。


大堀相馬焼の歴史

大堀相馬焼は、福島県双葉郡浪江町の大堀地区で作られ始めました。その歴史は300年以上といわれています。農民や、他所から移住してきた陶芸職人たちによって作り続けられてきた陶器を、相馬藩が特産物として広めようと、手厚い補助を行いました。職人の移住を禁止し、領内で使う陶器は地元産を使うように命じ、できあがった陶器の売買は藩が管理。その結果、江戸末期には窯元の数は120戸まで増加し、一大産地となりました。

明治時代には、廃藩置県により、相馬藩が消失して公的な援助がストップしてしまいます。廃業に追い込まれる窯元が続出する中、戦争による徴兵も大きなダメージとなりました。終戦後は復員者や引揚者の懸命な努力により、大堀相馬焼の技術は後世へと受け継がれてきました。しかし、東日本大震災および福島第一原子力発電所事故によって、多くの窯元は再び苦境に立たされます。浪江町全域が避難区域となり、大堀地区も帰還困難区域に指定され、陶磁器の要ともいえる土や釉薬を採取することができなくなってしまいました。

しかし、苦しい状況の中、大堀相馬焼は復活を遂げます。代替えとなる土を選定し、釉薬を再現し、新天地で再開を果たす窯元も現れました。困難にめげずに何度でも立ち上がる姿には、まるで走り駒のような、たくましい生命力を感じます。


大堀相馬焼の世界を堪能するなら「道の駅なみえ」がおすすめ

大堀相馬焼を買い求めるなら、道の駅なみえがおすすめです。

道の駅なみえには、「なみえの技・なりわい館」という棟があり、大堀相馬焼のすべての窯元の作品を展示販売しているコーナーがあります。一口に大堀相馬焼といっても、伝統的なスタイルの湯飲みや皿のほかに、創意工夫を加えて現代風にアレンジされたものまで、さまざまな作品があります。実際に手に取りながら、自分好みの逸品を見つけるとよいでしょう。

施設では陶芸体験教室も行っています。手練りによる形づくりから、絵付けなど、オリジナルの作品づくりに挑戦できます。窯場では、美しい貫入音を聴くことも可能です。町内の鈴木酒造店による酒・酒粕・日本酒を使用した加工品の販売を行う酒蔵コーナー、日本酒を大堀相馬焼の器と共に楽しめる、おしゃれなカフェバーも併設されています。

道の駅なみえ本館には海産物やなみえ焼そばなどが味わえるフードコートがあるほか、子どもの遊べるスペースもあります。室内あそび場、ポケモンをモチーフにしたラッキー公園などがあり、家族での訪問にもやさしいのが特徴です。

道の駅なみえ<Information>

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大堀相馬焼が伝わる「浪江町」とは?

福島県双葉郡浪江町は、太平洋に面した港町です。福島県沿岸の海は親潮と黒潮がぶつかる場所にあたり、町の請戸漁港には種類豊富な海産物があげられます。

海産物に加え、有名なグルメがなみえ焼きそばです。過去に開催されたB級グルメの祭典「B-1グランプリ」の第8回大会でグランプリに輝き、名を広めました。極太麺にモヤシと豚肉のシンプルな具材が特徴で、ラードと濃厚ソースで仕上げるがっつり系グルメです。労働者のために食べ応えと腹持ちを求めた結果、このスタイルになったと伝わっています。

浪江町では現在、スマートコミュニティの推進に取り組んでおり、電気自動車が公共交通として利用されるなど、先進的な取り組みを行っているのにも注目が集まっています。

町公式のイメージアップキャラクターは「うけどん」です。お米の妖精である彼女は、体は餅、髪はイクラ、定位置はどんぶりの中だそう。父・母・祖父・祖母・いとこ・友達のキャラクターもいます。ゆるっとした見た目が愛らしい印象です。


不屈の精神で受け継がれる大堀相馬焼は、未来へ

今回は浪江町に伝わる大堀相馬焼をご紹介しました。

福島県の工芸品として有名な大堀相馬焼は、青ひび・駒絵・二重焼が特徴的な陶器です。

戦争や震災など、存続の危機を何度も迎えた大堀相馬焼ですが、たくましく今日までバトンを受け渡し続けられたのは、「伝統を守りたい」と奮闘する職人や地域の方の懸命な努力があってこそでしょう。

窯元の作品は、道の駅なみえにて購入可能です。ぜひ実際に手に取って、その美しさと魅力を感じてください。


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