【青森県】自動車も自転車もお断り!階段国道339号

国道とは日本国が政令で指定した道路の総称です。
全国規模の幹線道路網を形成する道路ですから、一般的に幅が広かったり、車両が速度を出しやすい構造になっていたりして、多くの車両が行き交う道路というイメージがあることでしょう。
しかしこういった国道のイメージは、一般的なイメージではあるものの、例外と言える国道も多々あります。
特に青森県を通っている国道339号には、国道であるにもかかわらず、車両が一切通行できない階段となっている部分があるのです。


国道339号とは?

国道339号は、青森県弘前市を起点として津軽平野を北上、五所川原市を経由して、津軽半島北端の東津軽郡外ヶ浜町の三厩(みんまや)本町に至る道路です。

国道としての指定を受けたのは1974年、この記事の掲載時点からちょうど50年前のことになります。
国道339号は津軽半島を南北に縦断し、北の方では津軽半島の日本海沿岸に道路が通っています。
そして有名な龍飛崎を通ってからは南東方向へ向かい、三厩本町へ行くのです。

終点の三厩本町の交差点では、国道280号と道路がつながっていて、339号と280号を走破すると、青森市に至ります。
つまり、津軽半島を逆Uの字型に一回りしてくるルートを取れるような国道が設定されているのです。

余談になりますが、かつては津軽半島を一回りするルートで鉄道の建設も計画されました。
しかし、半島の西側の鉄道(津軽鉄道線)も東側の鉄道(JR津軽線)も、龍飛崎に至ることはないまま現在に至っています。



階段国道

国道339号は、弘前市から外ヶ浜町に至るまではごく一般的な国道ですが、外ヶ浜町内の交差点で突然、青森・今別方面へ行くのであれば国道339号から外れるようにという標識が現れます。


標識を無視するように国道339号を直進すると、やがて道路のセンターラインが薄くなっていき、幅員は狭くなっていきます。
そして最終的には、車道が国道339号ではなくなってしまうのです。


と言っても、国道339号はこの場所で途切れてしまっているわけではありません。
右側に折れ曲がって続いているのです。
しかし、この折れ曲がった道のすぐ先が、全長388.2m、段数362段、標高差が70mの階段となっています。
ご存じのように、階段とは基本的に徒歩でなければ通行できないものです。
自転車や二輪車、自動車といった車両は、当然この階段となっている道を通行することができません。

ちなみに、実のところ「車両が通行できない国道」は、全国的には結構あります。
例えば国道58号は、鹿児島県鹿児島市と沖縄県那覇市を結ぶ国道です。
両市の間は陸続きではないので、当然車両はそのままでは通行できず、フェリーなどを使って渡るよりほかにありません。
このような国道は海上国道と呼ばれています。

また、陸上の国道であっても、幅員が1.5m未満であるといった理由で車両の通行が不可能な国道も存在します。
こういった国道は点線国道と呼ばれています。
また「酷道」という通称も知られています。

しかし、階段であるという理由で車両が通行不能な国道は、この339号の階段国道が全国で唯一です。
なお、階段国道の東側(手前側)に階段国道をう回できる道路が存在するので、
弘前方面と三厩方面を自動車などで行き来すること自体は問題なく可能です。


なぜ階段が国道に指定されたのか?

階段が国道に指定された理由ははっきりとはしていませんが、青森県や国土交通省などが発表している内容を参照すると、以下のような経緯がうかがえます。
現在階段国道となっている部分は、国道として指定されるよりも前の時点では、狭くて急な坂道である県道でした。
坂道の中腹には竜飛中学校、坂道の上には竜飛小学校が存在しました。
坂道の下から中学校までは、古くから中学校へ通う生徒らのために階段が設けられていたと言われています。

そして1974年にこの坂道は国道339号の一部に指定されました。
車両が通行できない道であるにもかかわらず国道に指定されたのは、暫定的に国道に指定し、車両が通行できる道として改良する計画であったからという説が定説となっています。

その一方で、国道指定後の1985年頃には、竜飛小学校への通学を楽にするために、坂道の上側にも階段が整備されました。

階段国道は既に記したように、全長388.2mで高低差は70mという、車両を通すには緩くない坂道です。
筆者も以前実際に通行したことがありますが、狭くて急な道を改めて車道に整備しなおすのは困難だったことは容易に想像できます。
さらには、階段国道をう回して車両が通行できるような道路が整備され、階段国道を取り急ぎ車両通行可能に整備する必要はなくなりました。

また、竜飛中学校は1984年、小学校は1989年に閉校となりました。
児童・生徒が減少した背景には、青森県と北海道を結ぶ青函トンネルが開業(1988年)する前後の時期に、階段国道の周辺に居住するトンネル建設関係者の世帯が減少したことがあるとされています。

以上のような理由で、階段国道の生活道路としての重要性自体が低下したことから、この道は階段のままで存続することになったのです。

さて、本来ならば、新たに整備されたう回路を国道339号として指定しなおすことが順当と言えます。
しかし、全国唯一の階段国道は既にメディアなどにとりあげられて有名になっていました。
それならば、階段国道のまま残した方が観光資源になるという判断がなされて、う回路を国道に指定しなおすという措置はとられなかったのでしょう。
1993年から1996年にかけて、階段が再整備されて現在に至っています。
そして狙い通りに、階段国道は外ヶ浜町では屈指の観光スポットになっているのです。


階段国道へ行くには?

※2024年11月時点での情報です。

階段国道は既にご紹介したように国道339号の一部なので、現地には自動車で国道339号を走り続ければ容易に赴くことができます。
ただし、駐車できる場所が階段の下側(北・三厩側)には乏しいので、基本的には上側(南・弘前側)に駐車することになるでしょう。

また、乗合タクシー「わんタク」の利用でも、階段国道の付近へ容易にアクセスが可能です。詳細はわんタクのWebサイトでご確認ください。

ちなみに、階段国道の上側の入り口付近には「津軽海峡冬景色歌謡碑」が設置されています。
石川さゆりさんの歌った名曲『津軽海峡・冬景色』の歌碑で、ボタンを押すと、龍飛崎について歌っている2番の歌詞が流れます。

付近にはこのほかにも、龍飛崎灯台や龍飛崎温泉ホテル竜飛といった観光スポットがあります。

なお、階段国道は冬期には閉鎖される期間があるので、それ以外の時期に訪れるようにしてください。

Information

  • 名称 階段国道339号
  • 所在地 青森県東津軽郡外ヶ浜町三厩龍浜
  • 問い合わせ番号 0174-31-1228(外ヶ浜町産業観光課)
  • 注意事項 冬季閉鎖期間あり

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まとめ

階段国道は、その誕生の経緯こそはっきりしないものの、外ヶ浜町の重要な観光資源となって今に至っています。
龍飛崎を訪問の際には、ぜひ階段国道を歩いてみてください。
特に8月中旬頃には道の左右に紫陽花を眺めながら歩くことができますよ。


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