
食用菊「阿房宮」とは?東北の秋を彩る食材の産地やレシピに迫る!
目次
きのこや栗のように「秋が来たな」と思わせてくれる食材は色々ありますが、青森県では黄色の食用菊「阿房宮(あぼうきゅう)」がそのひとつ。
今回は阿房宮がどんな食材なのか、産地や旬の時期、ほかの食用菊との違い、さらにおすすめの食べ方まで紹介します。
阿房宮とは?青森で人気の食用菊に迫る

阿房宮とは一体どんな食べ物なのでしょうか?味や特徴だけでなく、名前の由来にも迫りたいと思います。
阿房宮は青森で有名な食用菊
阿房宮は、黄色い花びらが鮮やかな食用菊です。苦みが少なく、ほんのりとした甘みがあるのが特徴で、シャキシャキした歯ごたえが楽しめます。見た目の美しさと食べやすい味わいから、青森ではお盆や秋の食卓に欠かせない存在。スーパーや直売所に並ぶと、地元の人は「秋が来たな」と感じる定番の味覚です。
名前の由来は?
「阿房宮」という名前は、中国の秦の始皇帝が築いた壮大な宮殿「阿房宮」にちなんでいると伝えられます。豪華な宮殿の名を借りた阿房宮は、その名のとおり食卓を華やかにしてくれる菊。少し大げさに感じる名前も、料理に添えられた瞬間の鮮やかさを見れば納得できます。
阿房宮の産地と旬の時期はいつ?

食用菊である阿房宮の主な産地はどこなのでしょうか?旬の時期も併せてご紹介します。
主な産地は青森県南部町
阿房宮は、青森県南部町を中心に栽培されている食用菊です。南部町は冷涼な気候と昼夜の寒暖差が大きく、菊の栽培に適している土地柄。ここで育った阿房宮は色づきが良く、花びらもしっかりしているのが特徴です。
干し菊に加工されるほか、最近ではジャムやサイダーといった商品化の試みもあり、食卓以外の楽しみ方も広がっています。
阿房宮の旬は9月中旬から11月上旬ごろ
阿房宮の収穫時期は9月中旬から11月上旬ごろ。花びらの黄色が鮮やかになり、甘みと香りが増すのは気温が下がり始めるタイミングです。この時期に出回る阿房宮はシャキッとした食感も際立ち、新鮮なままおひたしや和え物にすると格別です。
阿房宮と”もってのほか”、”かきのもと”の違いは?

食用菊といえば、「もってのほか」「かきのもと」も有名ですよね。青森でよく食べられる阿房宮と、もってのほか、かきのもとの違いはあるのでしょうか?
阿房宮は黄色、もってのほか・かきのもとは紫色
阿房宮は鮮やかな黄色の花びらが特徴です。一方、「もってのほか」は山形などで親しまれる淡い紫色、「かきのもと」は新潟や山形で栽培される赤紫色。色合いだけでもそれぞれの個性がはっきりと分かります。
阿房宮は苦みが少ない
阿房宮は苦みが少なく、甘みが感じられるやさしい味わい。シャキッとした歯ごたえもあり、幅広い人に食べやすい食用菊です。「もってのほか」や「かきのもと」は、やや苦みがあり独特の香りが強いため、お酒の肴や大人向けの味わいとして好まれる傾向があります。
阿房宮は県内で、もってのほか・かきのもとは県外でも食べられる
阿房宮は青森を中心に秋の食卓で広く食べられる家庭向けの食材として定着しています。対して「もってのほか」「かきのもと」は東北・新潟などで地域性の強い食材として扱われ、県外への流通も比較的多い傾向があります。阿房宮は県内での消費が中心で、地元ならではの味として守られているのが大きな特徴です。
阿房宮のおすすめの食べ方

ここでは、地元でよく食べられる伝統的な食べ方を中心に、阿房宮を日常の食卓でどう楽しむかを紹介します。
青森では定番!さもだしと菊の塩辛
青森では、きのこ“さもだし”(ナラタケ)と食用菊を合わせた「菊花とさもだしの塩辛」が秋の味覚のひとつとして親しまれています。
作り方は、菊とさもだしをゆでて水を絞ったものに醤油・酒・砂糖・顆粒だし・鷹の爪を煮て冷ました調味液を混ぜ、納豆昆布を加えてなじませる。菊の甘みとさもだしの旨み、昆布のねばりが合わさって、ご飯のお供にも酒の肴にもぴったりな一品になります。
食卓に彩りを!菊巻き
「菊巻き」は、菊の花びらで紅白なますを包む、見た目もきれいな郷土料理です。
まず菊を軽くゆでて水を切り、大根・にんじんのなますを作ります。巻きすやラップを使って菊でなますを包み、切って盛り付け。爽やかな酸味と菊の香りが合わさって、おもてなし料理やお盆の席にもふさわしい一皿になります。
香りと食感を楽しむ!汁物の具
阿房宮は、おひたしや和え物だけでなく、汁物に入れても美味しい食材です。
熱した味噌汁や澄まし汁に阿房宮をちぎって入れるだけ。黄色い花びらがふわりと広がり、見た目にも華やかになります。菊のほのかな甘みとシャキシャキした食感が、汁物のやさしい味わいとよく合います。家庭では「ちょっと彩りが欲しいな」という時に入れられることも多く、いつもの味噌汁が一気に特別感のある一杯に変わります。
まとめ
阿房宮は、青森県南部町を中心に栽培される食用菊で、黄色の花びらとやさしい甘み、シャキッとした食感が特徴です。一般的な食用菊と比べても苦みが少なく、誰でも食べやすいのが魅力。地元では、さもだしと合わせた塩辛や、彩りを添える菊巻き、汁物の具として親しまれてきました。
県外ではあまり見かけない食材だからこそ、阿房宮を口にできるのは東北ならではの楽しみ方。秋に青森や南部町を訪れる機会があれば、ぜひ一度味わってみてほしい食材です。















