【岩手県】JRの切符で山田線と106特急・急行バスに乗れる実証実験に参加してみた!

盛岡と宮古を結ぶJR山田線と国道106号を走る路線バス「106(ひゃくろく)特急・急行」バスの間で、互いの共存を目指す実験が2024年4月1日から2025年3月31日の1年間の予定で実施されています。

JRの切符で民間会社の路線バスに乗ることができるこの実験にどんな意味があるのか、両方に実際に乗ることで考えみようと思い両方に乗車してきました。


鉄道とバスが共存するための実証実験とは?

JR山田線と岩手県北バス「106特急・急行バス」の路線(盛岡~区界間は北側が鉄道で南側が国道)

盛岡~宮古間のJR乗車券(定期券や回数券も可、青春18きっぷなどおトクな切符は除く)の有効期間内なら、同じ区間の「106特急・急行バス」に乗車できるという実験です。

それぞれの運賃形態はそのままで、JR乗車券の1,980円に対してバスは2,000~2,200円で、最大で220円の得となります(2024年5月24日現在)。

実証実験の告知チラシ

さらに盛岡~宮古間の運転距離は101km超なのでJR乗車券は途中下車が可能ですが、バスも途中下車ができます(ただし、盛岡~区界(くざかい)間のバス停では途中下車はできません。

また、バスの乗車券でJRには乗車できず、バスに途中乗車する場合にはバス路線料金が適用されます。


まずはJR山田線で盛岡から宮古へ!

110形
盛岡駅6:32発の宮古行 110形の1両編成

早朝で人が少ない盛岡駅2番線ホームから、朝6:32発の宮古行に乗車しました。

駅飲食店は開店前で、駅ナカのニューデイズの開店は6:30のため朝食は駅前のコンビニで調達しましたが、駅地下「めんこい横丁」のファミリーマートのように6:00から開いていて欲しいものです。

キハ110系車両内部

キハ110系車両内部 ボックスシートは4人掛けと2人掛け、後方にトイレ

盛岡~上盛岡~山岸~上米内(かみよない)

住宅街の中を走る上盛岡~山岸間 

盛岡駅を出発したディーゼル車両は、国道106号線とは別ルートで住宅街の中を走ります。これらの無人駅に停車していきますが乗る人はほとんどいません、もう少し遅い時間帯にはこの区間内だけを走る通勤・通学列車があります。

1両編成の列車ながらワンマン運行ではなく、運転手さんのほかに車掌さんが乗車していて、途中乗車した客には車内で車掌が行先を聞いて切符を販売するシステムです。

上米内駅

山岸駅から先は次第に人家が減って米内川沿いに田園風景が広がり、上米内駅に到着します。

米内浄水場
山田線の車窓から見える米内浄水場

上米内駅の近隣には盛岡市で最も古い米内浄水場があって、浄水場が完成した1934年(昭和9年)に植栽されたヤエベニシダレヒガンザクラ群が咲き乱れる、盛岡市内でも屈指の桜の名所です。

上米内~区界(くざかい)

キハ110形
上米内~区界間の山間のうっそうとした森の中をディーゼルエンジンの回転を上げて上る、キハ110形車両

この両駅の間にはかつて大志田駅(おおしだえき)浅岸駅(あさぎしえき)がありましたが、山間部のために乗降客の減少で廃駅となりました。そのためこの区間はJR東日本管内の駅間距離として25.7kmの最長区間となり、列車は山間をひたすら走り続けます。

なお、この区間は山田線のなかでも野生動物との接触事故の件数が最も多い区間です。

区界~松草~川内

区界駅
区界駅には小さな待合室だけがひっそりと建っている

盛岡市から宮古市になる区界駅付近は標高744mにあり東北地方で最も標高が高く、ここから国道106号との並走が始まります。この区界から宮古までの間が「106特急・急行バス」との共存区間で、各駅近くに乗り換え可能なバス停があります。

なお、松草駅(まつくさえき)川内駅(かわうちえき)の間に、「秘境駅」として有名な平津戸駅(ひらつとえき)がありましたが2023年3月17日に廃駅となりました。

松草の先、平津戸駅近くの国道106号(旧道)と閉伊川

宮古市で太平洋に注がれる閉井川(へいいがわ)も一緒に、それぞれが三つ編みのおさげ髪のように交差しながら東へ向かいます。

川内~箱石~陸中川井~腹帯(はらたい)~茂市(もいち)

川内駅
きれいな駅舎の川内駅

山田線は腹帯までは国道と交差しながらおおむね閉井川の右岸(南側)を通り、車窓からは「四十八釜」などの閉伊川の名所などが見えたります。

閉伊川
車窓から見る閉伊川の流れ(箱石~陸中川井間)

腹帯の手前から閉伊川の左岸に移り、かつて「ローカル線の東の横綱」と呼ばれていた岩泉線の始発駅だった茂市駅に到着します。

茂市駅
線路が撤去された元岩泉線のホーム、今もひっそり残る岩泉線が存在した証

岩泉線は2010年7月31日発生の土砂崩れによって不通となり、2014年4月1日に廃止されて「東の横綱」の座を山田線に譲りましたが、茂市駅には今もその痕跡が残されています。

茂市~蟇目(ひきめ)~花原市(けばらいち)~千徳(せんとく)~宮古

蟇目駅
蟇目駅は山田線で唯一の民間への委託駅

茂市から先、蟇目辺りから宮古まで山田線と国道106号線は並んで閉伊川の左岸を走り、やがて前方に東日本大震災津波によって被害を受けて、海沿いから移転した宮古市役所の新庁舎が見えると宮古駅に到着です。

宮古駅
宮古駅に到着した110形と三陸鉄道の36形

宮古駅構内では、JRの110系と三陸鉄道の36形(さんりくがた)系の車両が仲良く並んで出迎えてくれました。


帰りは106特急・急行バスで盛岡へ!

宮古駅前のバス6番のりばから見たJR宮古駅と直結の宮古市役所

宮古駅のJRみどりの窓口で盛岡までの切符を購入して、岩手県北バス・宮古駅前案内所前の6番のり場から盛岡駅東口行きの「106特急・急行」バスに乗ることができます。

6番のりばで出発をまつ106特急(宮古市内のベーカリー提供のラッピングバス)

山田町の船越駅前始発の便もありますが、JR乗車券で乗車できるのは宮古駅前からです。特急なら盛岡まで1時間40分ほどですが、今回はJRの所要時間とほぼ同じ(2時間15分ほど)の急行に乗車しました。

都市間バスでありながら宮古市内では普通の路線バスのように利用されていて、平日の日中でも乗車率は高めです。

鉄道とバスの相互乗り換えが可能な駅とバス停

なお、本記事ではJR乗車券で乗降できるバス停のみを記載しています。

宮古駅前~千徳駅前~花原市~蟇目~茂市

宮古駅を出発した106急行バスの車内

いずれも同名のJR駅が近隣にあって、バスと鉄道の乗り換えができるバス停です。

蟇目バス停
リンゴの形が可愛い蟇目のバス停

千徳駅前を過ぎると左側に閉伊川が現れてそのまま川沿いを西へ向かいますが、鉄道より川に近いためにまた違った閉伊川の景観を楽しめます。

閉伊川
バスから見た閉伊川(花原市~蟇目間)

茂市バス停では、岩泉方面行のバスに乗り換えるのか、数人のお客さんが下車していきました。

茂市~腹帯~川井~箱石~川内~(やまびこ産直館)

閉伊川
川内バス停近くの閉伊川

車窓に見え隠れする閉伊川を眺めながらバスにゆられていると、川内の先にある道の駅「やまびこ産直館」でトイレ休憩のためにバスは停車します。

やまびこ産直館

ただし停車時間が3分しかなく、外に出たのは自販機で飲み物を買うお客さんだけでした。

なお、やまびこ産直館にもバス停がありますが、JR乗車券では乗降できません。

(やまびこ産直館)~松草~区界~盛岡駅前

宮古盛岡横断道路
区界バス停付近で国道106号の旧道から見た宮古盛岡横断道路(区界トンネル手前)

産直館を出発してからもバスは閉伊川の左岸に沿って走り、いくつかのバス停を素通りしながら松草と区界に停車します。

国道106号の区界峠は交通事故が多く、冬は積雪や路面凍結が多い難所で、新区界トンネルの完成で楽に短時間で通過できるようになりましたが、106急行は以前の峠道を通って盛岡市内へ向かいます。

106急行バス
盛岡市内に入った106急行バス

やがて、2021年に完成した梁川ダム(やながわだむ)を過ぎると、今度は梁川に沿いながら盛岡市内に入り、終点の盛岡駅東口バスターミナルの7番おり場に定刻通りに到着しました。


実証実験について考えてみた

盛岡駅構内でのPR

今回は盛岡から宮古までを山田線に乗り、宮古からは106急行バスでの日帰旅でしたが、乗車した日の山田線宮古駅からの盛岡行は朝の1便しかなく、この実験がなければJR乗車券での日帰りは不可能でした。

両方のダイヤを合わせることで実質的に増便されたことになり、利便性が向上したと言えましょう。

宮古盛岡横断道路
宮古盛岡横断道路 上川井インターチェンジ付近

また、宮古盛岡横断道路を利用する106特急バスなら所要時間を片道40分短縮でき、バスより安いJR乗車券で移動時間が短縮できるというのもメリットです。

ただ、バスで途中下車が可能な地域には観光スポットが少なく、地域住民の生活路線としては便利でも観光で利用するメリットは少ないかもしれません。

Information


まとめ

実際に両方に乗車してみると、鉄道は席にゆとりがあり、長時間乗車でも車内を移動したりトイレに入ったり体を動かせますし、バスは座席はやや狭いながらも盛岡~宮古間の所要移動時間が短く便数が多く、どちらにも甲乙つけがたい魅力があります。

ほぼ同じ路線を走る鉄道とバスを乗り換えられるようにすることで、公共交通の利用を促進させる実証実験がどのような結果を導き出すかは、現時点ではまだわかりません。

しかしながら、JR東日本において「超赤字路線」である山田線はこのままでは廃線となる可能性が高く、山と川が織りなす秘境の景観を楽しめる貴重な路線の廃止を防ごうとする声の高まりから、この実験が実施されたと言われています。

この実験によって何らかの良い結果が導き出され、山田線が路線バスと共存が可能な赤字ローカル線として存続していくことができれば良いと、切に願っています。

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