山で生きる熊狩りの名手「マタギ」は阿仁マタギの里・北秋田市から始まった!【秋田県】

世界文化遺産に登録されている環状列石(ストーンサークル)で知られる縄文時代の伊勢堂岱遺跡(いせどうたいいせき)のある阿仁地方(秋田県北秋田市・上小阿仁村)は、マタギ発祥の地といわれています。

マタギは、山での掟を固く守り、昔ながらの伝統と作法を守りながら狩猟をして暮らす人々です。

マタギは漢字では“又鬼”と書かれることが多く、その語源は定かではありません。また、今ではほとんど“マタギ”とカタカナ表記で呼称されています。

書物に“またぎ”という言葉が登場したのは、江戸時代の前期、1600年代後半の南部藩(岩手県)や津軽藩(青森県)の日記でした。

カタカナになったのは明治時代以降といわれていますが、はっきりしたことは分かりません。阿仁の人たちは昭和の終わり頃から“阿仁マタギ”と名乗っていたようです。

狩猟生活をする昔のマタギ ©北秋田市

狩猟生活に適した東北地方の森

「マタギ=動物を狩りして生計を立てる」ことは、人類が生まれてから常に行われていた行為です。

弥生時代に農耕によって米などを育てることが大陸から伝わる以前、縄文時代までは主食はドングリやクリなどの果実で、男の仕事は狩りでした。

東北地方に縄文遺跡が多く発見されているのは、この地方が落葉広葉樹の森で、秋に実がなり、落葉して見通しが良くなって狩りに適した条件が揃っているからといわれています。

大正から昭和初期頃の阿仁マタギ(撮影年代不明)©北秋田市

弥生時代になってからは、平地では農耕が盛んになり、狩りは山間部に住む人たちで行われるようになります。そのため狩猟生活者は減少しましたが、マタギの伝統は引き継がれていきました。

マタギ発祥の集落といわれる根子集落

阿仁マタギは、居住した集落によって

  • 根子(ねっこ)マタギ
  • 打当(うっとう)マタギ
  • 比立内(ひたちない)マタギ
  • 八木沢(やぎさわ)マタギ
  • 萩形(はぎなり)マタギ

などと呼ばれています。阿仁マタギの人数は37人(2023年時点)。

貴重な存在となってしまいました。

阿仁マタギ発祥のといわれる根子集落 ©北秋田市

北秋田市阿仁根子(旧阿仁町)は、阿仁地区で最も早くマタギが居住した地といわれています。根子は北秋田市の南部、阿仁川沿いにある山間部の集落で、この地のマタギは根子マタギと呼ばれています。

根子に人が住みはじめたのは源平合戦後で、源氏の末裔が住み着いた…平家の落人が住み着いた…という双方の説があり、ルーツははっきりしません。

集落内には農耕ができる土地もありますが、山間部には多くのマタギが住んでいました。マタギたちは山の中で昔ながらの規律に則った狩猟生活をしながら、熊の胆嚢(たんのう)を加工した胃腸薬“熊の胆(くまのい)”を売ることで生計を立てていました。

そして時に熊の胆を売りに訪れた地方に定住し、その地方のマタギになったといわれています。

消滅した八木沢マタギ・萩形マタギ

八木沢、萩形とも根子集落のある北秋田市に隣接する上小阿仁村にあります。これら2集落には根子集落からマタギが移り住み、かつては多くのマタギが暮らしていました。

しかし、萩形では1966年(昭和41年)に萩形ダムが建設され、集落は湖底へと沈み住民たちは他所へ移ってしまいました。

八木沢でも2009年に最後のひとりとなっていたマタギが狩猟免許を返上し、八木沢マタギももういません。寂しいことですが時代の流れには逆らえないのかもしれませんね。


根子番楽は国の重要無形民俗文化財

国の重要無形民俗文化財に指定されている「根子番楽」©北秋田市

根子に伝わる根子番楽(ねっこばんがく)は、源氏の遺臣あるいは平家の落人たちが根子村に移り住んで伝えたと伝承される山伏神楽の一種で、勇壮な武士舞と、静かで古典的な舞が演じられます。

かつては、表舞12番・裏番8番の合わせて20番の演目が存在しましたが時代の流れとともに廃れてしまい、現在は表舞8番・裏番1番の合わせて9演目が継承されています。

国の重要無形民俗文化財に指定されていて、8月14日に根子番楽伝承館(旧根子小学校体育館)で舞われます。

根子番楽伝承館<Information>

  • 施設名称:根子番楽伝承館(旧根子小学校体育館)
  • 所在地:秋田県北秋田市阿仁根子舘下段44
  • 電話番号:0186-82-2220(阿仁公民館)
  • URL:北秋田市公式HP – 根子番楽

Google Map


マタギ関連の施設が集まる打当マタギの里

「マタギ資料館」が併設されている温泉宿泊施設「打当温泉 マタギの湯」 ©秋田県

打当集落(北秋田市阿仁打当)は、大正から昭和初期に激動の人生を過ごした伝説のマタギ・松橋富治(まつはしとみじ)の半生を描き、2004年度の直木賞、山本周五郎賞をダブル受賞した熊谷達也(くまがいたつや)の小説・邂逅の森(かいこうのもり/文藝春秋社刊)の舞台となった集落で、当時全戸の内マタギを家業としている家が半数以上といわれたマタギの里です。


「マタギ資料館」「マタギの里熊牧場 くまくま園」などマタギ関連の施設や、温泉宿泊施設「打当温泉 マタギの湯」もあり、阿仁マタギの中心エリアとなっています。

マタギたちが分け入った森にある二段に落ちる「安の滝」日本の滝100選に選ばれるほどの見事さです。特別に許可されたどぶろくも味わえます。

最寄り駅は秋田内陸縦貫鉄道「阿仁マタギ駅」です。

マタギの装束や狩猟道具が多数展示されている「マタギ資料館」

独特なマタギの道具などが展示されている「マタギ資料館」 ©秋田県

「秘境の宿 打当温泉 マタギの湯」に併設された資料館で、国重要有形文化財に指定されているマタギの装束や狩猟道具が多数展示されています。

「阿仁マタギ特区」として少量製造許可が下りている希少な「どぶろく」

ここでしか味わえないマタギの秘蔵酒、どぶろく ©秋田県

北秋田市阿仁地区(旧阿仁町)は、内閣府より“阿仁マタギ特区”に認定されていて、酒造免許(生産・販売)がなくても日本酒の一種どぶろくの少量製造許可が下りています。

「秘境の宿 打当温泉 マタギの湯」では、自家米から醸造したここでしか味わえない貴重などぶろくが味わえます。

マタギ資料館<Information>

  • 施設名称:マタギ資料館
  • 所在地:〒018-4731 秋田県北秋田市阿仁打当仙北渡道上ミ56
  • 電話番号:0186-84-2612
  • 公式URL:マタギ資料館

Google Map

マタギの湯<Information>

  • 施設名称:秘境の宿打当温泉 マタギの湯
  • 所在地:〒018-4731 秋田県北秋田市阿仁打当字仙北渡道上ミ67
  • 電話番号:0186-84-2612
  • 公式URL:打当温泉 マタギの湯

Google Map


マタギの里熊牧場「くまくま園」

ツキノワグマのほか、北海道のヒグマも飼育されている「くまくま園」 ©北秋田市

マタギにとって大切な食料源であり資金源だった熊。「くまくま園」は、本州に住むツキノワグマと北海道のヒグマを観察できる施設です。

販売中のエサをツキノワグマにあげたり、期間限定で小グマとのふれあいも体験できたりします。

くまくま園<Information>

  • 施設名称:くまくま園
  • 所在地:秋田県北秋田市阿仁打当字陳場1-39
  • 電話番号:0186-84-2626
  • 公式URL:くまくま園

Google Map


比立内マタギの里にある「道の駅あに マタギの里」

国道105号沿いにある「道の駅あに マタギの里」 ©北秋田市

阿仁比立内(あにひたちない)は、根子と打当の中間にある集落で、比立内マタギの里として知られています。

集落には秋田内陸縦貫鉄道の比立内駅があります。比立内駅から約500m離れた阿仁街道沿いにある「道の駅あに マタギの里」では、阿仁地方の特産物を使った料理が味わえます。

道の駅あに<Information>

  • 施設名称:道の駅あに マタギの里
  • 所在地:秋田県北秋田市阿仁比立内字家ノ後8-1外
  • 電話番号:0186-69-2575
  • 公式URL:道の駅あに マタギの里

Google Map


その他の記事