誰もが知っている「あの童謡」は福島で生まれた!作詞・作曲に込められた想いを深堀りして紹介【福島県】

音楽の授業や家庭など、様々な場で歌われる「日本の童謡」。大人になっても、口ずさめば故郷の風景を、耳にすれば子ども時代の記憶の1ページを思い起こす方も多いのではないでしょうか。

そんな多くの方の心に刻まれる童謡の中には、東北との縁が深いものも少なくありません。今回は「福島県」とゆかりがある童謡についての雑学を深堀りします。


広野町:童謡「とんぼのめがね」ゆかりの地

とんぼのめがね

福島県の太平洋沿岸に位置する双葉郡広野町。年間を通して寒暖差が少ない、穏やかな気候が特徴です。一年間の日照時間も長いため、近年ではハウスを活用したバナナ栽培にも取り組んでおり、6次化商品づくりも進められています。

そんな広野町にゆかりのある童謡の1つに、「とんぼのめがね」があります。

この「とんぼのめがね」を作詞した額賀 誠志(ぬかが せいし)氏は、広野町で内科医院を営んでいた医師です。終戦後の日本の子どもたちに夢のある歌を届けたいと、童謡の制作にも熱意をもって取り組んでいました。

「とんぼのめがね」の舞台となっているのは、広野町にある箒平地区です。額賀氏が往診に行った先で見た、子どもたちがとんぼと遊んでいる様子がモチーフとなったと伝えられています。

額賀氏の詞に、作曲家の平井康三氏がメロディーをつけ、「とんぼのめがね」が完成。NHKのラジオ放送にて曲が流されると、全国へと広まりました。広野町にある築地ヶ丘公園には、作曲を担当した平井氏の文字で書かれた歌碑がつくられています。

シンプルな歌詞の中には、子どもたちの未来を想う額賀氏の願いが込められています。その気持ちへ寄せられる共感の深さが、「とんぼのめがね」が今日まで歌い継がれ続けた由縁かもしれません。

リンク:広野町公式HP – 子どもの目をもったお医者さま 額賀誠志

とんぼのめがね 歌碑<infomation>

  • 名  称:とんぼのめがね歌碑
  • 住  所:〒979-0403 福島県双葉郡広野町下浅見川築地ヶ丘公園 内

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鏡石町:「牧場の朝」ゆかりの地

牧場の朝

福島県の中央部に位置する岩瀬郡鏡石町。遠くに山々を望む田園風景と、のどかな牧草地が広がる町です。阿武隈川の恵みによってもたらされた豊かな土壌は、古くから豊かな食文化をもたらしてきました。

鏡石町にゆかりのある童謡に「牧場の朝」があげられます。

日本の文部省唱歌の1つに数えられているこの曲の歌詞は、鏡石町にある岩瀬牧場とされています。

岩瀬牧場は日本初の西欧式牧場として誕生し、オランダから13頭の乳牛と農機具を導入しました。その際に友好の証として送られたのがこの青銅の鐘です。

この歌の作詞者は長い間不明とされていたのですが、現在は杉村楚人冠氏であるとみなすのが定説となっています。朝日新聞社の記者であり、著名な文筆家だった人物です。

「牧場の朝」は1932年に小学唱歌として紹介され、1968年にはNHK番組「みんなのうた」でも放送されました。現在、鏡石町では「牧場の朝」が町のシンボルソングに設定され、町内には1日2回メロディーが鳴り響きます。

リンク:鏡石町公式HP – 唱歌「牧場の朝」とかがみいし~幻の歌が町の歌になるまで~

岩瀬牧場<infomation>

  • 名  称:岩瀬牧場
  • 住  所:〒969-0401 福島県岩瀬郡鏡石町桜町225
  • 電話番号:024-862-6789
  • 営業時間:9:00~16:00
  • 公式URL:https://iwasefarm.studio.site/

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桧枝岐村:「夏の思い出」ゆかりの地

夏の思い出

福島県南会津郡檜枝岐村は、日本有数の豪雪地帯としても有名です。会津駒ヶ岳などの2000m級の山々に囲まれ、村の98%が林野が占めています。12世紀の源平合戦の際に平家の落人が移り住んだとする「平家の落人伝説」も残されており、ミステリアスな一面も…

また、村に伝わる「檜枝岐歌舞伎」は、江戸時代後期から始まったとされており、県の重要無形民俗文化財に指定されています。

福島県・群馬県・新潟県・栃木県の県境に位置する「尾瀬国立公園」は、檜枝岐村が福島県側の玄関口となっています。2005年にラムサール条約に登録され、豊かな自然を織りなす湿地帯として有名な尾瀬の景観は、見る人に感動を与え続けています。

檜枝岐村にゆかりのある童謡に「夏の思い出」があげられます。

「夏の思い出」の作詞は、詩人の江間章子氏が担当しました。終戦後の1947年、NHKラジオで放送するオリジナル曲として「夢と希望のある歌を」と依頼されて制作したそうです。

幼少期を岩手県で過ごした江間氏にとって、水芭蕉の花は、夏の訪れを告げる花でした。戦時中に食料を求めて尾瀬を訪れた際、一面に広がる水芭蕉の姿から子ども時代の思い出が一気によみがえり、その光景が目に焼き付いたそうです。そこから江間氏にとって、水芭蕉は希望を感じさせる花となりました。

そして誕生した「夏の思い出」は、その美しいフレーズが人々の心を惹きつけ、現在まで歌い継がれる名歌となりました。

夏の思い出 詩碑<infomation>

  • 名  称:夏の思い出 詩碑
  • 住  所:〒967-0500 福島県南会津郡檜枝岐村左通124−6

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童謡には地域への愛着が込められている

今回は、福島とゆかりのある童謡をテーマに深掘りしました。

広野町で生まれた「とんぼのめがね」、岩瀬郡鏡石町で生まれた「牧場の朝」、檜枝岐村で生まれた「夏の思い出」、それぞれの童謡には福島の美しい風景が描かれています。ぜひそれぞれのゆかりの地を訪れた際には、歌を口ずさみながら、作詞家・作曲家の方々が感じ取った情景を肌で感じてみてください。


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