【岩手県釜石市】釜石湾を見守る巨大仏、東北三大巨大仏の一つ「釜石大観音」
目次
日本国内には大よそ16の「巨大仏(きょだいぶつ)」と言われる仏像が建造されています。この「巨大仏」とされる建造物に明確な基準はありませんが都市地理学,商業地理学,ランドマーク研究の研究者であり、高崎経済大学名誉教授の津川康雄(つがわ やすお)氏は著書「宗教的ランドマークとその要件 -大観音像を例として-」において巨大仏は25m以上、と基準としており、また、小説家の宮田珠己(みやた たまき)氏は著書「晴れた日には巨大仏を見に」のなかで「厳密な理由はないが、ウルトラマンよりデカいというのが一応の目安だ」とし40m以上を「巨大仏」としています。
とにかく、巨大な仏様、または信仰の対象となる巨大な建造物にて「巨大仏」としての明確な基準は存在しません。そこらへんは各々の基準で良いところではあります。
しかし、その巨大な姿は信仰・宗教に関係なく、街のシンボルとなっているのは確かなところではあります。
今回はそんな「巨大仏」の中でも釜石湾を向き、釜石市、または世界を見守る「釜石大観音」を東北に存在する他二体の「巨大仏」と一緒に少し深掘りしようかと思います。
東北に存在する三体の「巨大仏」
私は宮城県に在住している、という事もあり「巨大仏」と言われると真っ先に「仙台大観音」を思い浮かべますが東北には三体の「巨大仏」が存在しているのを皆様はご存知でしょうか?
大観密寺、「仙台大観音(仙台天道白衣大観音)」
宮城県仙台市に所在する「仙台大観音」は1991年に竣工、姿勢は「立像」、高さは100mになり像の種類は「白衣観音」とされています。この「仙台大観音」は正式名称を「仙台天道白衣大観音」としており、宮城県仙台市泉区にある寺院「大観密寺」の境内にあります。地元民からは「中山の観音様」の愛称で親しまれています。
仙台大観音は胎内を見学する事も可能で、胎内は12層に分かれており、60mに及ぶ吹き抜けになっています。12層には大観音の腹側と背側に展望窓が設置されていて、各々都心部側と泉ヶ岳側を望むことが出来ます。天気が良ければ直線距離60kmほどの牡鹿半島まで見渡すこともできます。
また、胎内にはエレベーターも完備されており直接12層へ昇ることが出来ます。
建造は地元民の深い信仰心から
「仙台大観音」の建造は地元仙台の企業「双葉グループ」が1964年から「中山(なかやま)」と名の付く大規模住宅地やレジャー施設等を開発した際に、同グループを率いた実業家・菅原萬氏が「事業が成功したのは日ごろ信仰していた観音様のお陰」という信仰心と仙台に名所を作りたいという思いから大観音像建立を発願したのが始まりとされています。
Information
- 名称 : 仙台天道白衣大観音
- 所在地 : 〒981-3217 宮城県仙台市泉区実沢中山南31−36
- 開業 : 1991年9月1日
- 宗派 : 真言宗智山派
- 開業時間
- 平日:午前10時~午後3時
- 土日祝祭日:午前10時~午後3時30分
- 拝観料 : 500円
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法國寺 会津別院、「会津慈母大観音」
福島県会津若松市に所在する「会津慈母大観音」は1987年に竣工、姿勢は「立像」、高さは57mになり全体のフォルムが丸々として優しく赤ちゃんを両手で抱いているのが特徴の大観音になりますが、元はツルカメ建設株式会社が所有していた土地と巨大仏で、現在は土地・建物及び経営権を宗教法人法國寺・会津別院へ譲渡しています。
会津慈母大観音は胎内見学も可能です。内部には1万体の御仏、金色に輝く二十五分の一の像、十二支御守本尊が安置されており、胸の高さの40メートル地点では所々にある展望窓から、会津の町並みや盆地の田園風景、磐梯山、飯豊連峰などを望むことができます。
また、会津慈母大観音がある「会津村」は60,000坪もの広大な日本庭園が広がる観光地となっており、庭園内には桜、ツツジ、蓮や水仙、紫陽花、椿、梅の木など四季折々の草木が植えられています。
平和の祈りから建立
世界平和を祈念し建てられた高さ57mの会津慈母大観音は1986年にツルカメ建設株式会社の故「芳賀昇之助」さんが、世界平和を祈願し「会津村」を創立、総工費10億円をかけ「会津慈母大観音」を建立しました。会津村敷地内には「会津慈母大観音」のほかに13.4 mの釈迦如来の涅槃像、「釈迦如来涅槃像」も所在しており、1985年開催の筑波万博のスリランカパビリオンに展示されていた「涅槃仏」とされています。
Information
- 名称 : 会津慈母大観音
- 所在地 : 〒969-3461 福島県会津若松市河東町長原東高野178(会津村敷地内)
- 開業 : 1986年
- 宗派 : 浄土宗捨世派
- 開業時間
- 4月〜11月 : 午前9時~午後5時
- 12月~3月 : 午前10時~午後4時
- 拝観料 : 大人500円、中高生400円、小学生300円
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明峰山石応禅寺、「釜石大観音」
岩手県釜石市に所在する「釜石大観音」は1970年に竣工され、姿勢は「立像」、像の種類は「魚籃観音」で高さは48.5mになります。東北の「巨大仏」の中では一番古い「巨大仏」になります。建立したのは釜石市内にある「石応寺」になり、胎内は螺旋階段となり、右前腕から魚の部分を経て左肘に掛けて展望台となっています。
釜石大観音は大平町鎌崎半島の小高い丘の上に建っていますが丘の中腹にはエスカレーターもあり、無理なく拝観することが可能です。
幽界・明界の平和を祈念する「釜石大観音」
大平町鎌崎半島に立つ白亜の魚籃観音像「釜石大観音」は、1970年4月に明峰山石応禅寺の十七世・雲汀晴朗(うんていせいろう)大和尚の発願により建立されました。観世音菩薩の慈愛によりさまざまな理由で亡くなった方々の霊魂に光明を与え菩提に導くこと、また現世に生きる人々を苦悩から救済することを主眼とし、幽明両界の平和を祈念しています。
Information
- 名称 : 釜石大観音
- 所在地 : 〒026-0002 岩手県釜石市大平町3丁目9−1
- 開業 : 1970年4月8日
- 宗派 : 曹洞宗
- 開業時間
- 午前9時~午後4時30分(最終入館) 午後5時(閉門) ※季節により変動あり
- 拝観料
- 個人 : 大人500円、中高生300円、小学生100円
- 団体(20名以上) : 大人450円、中高生270円、小学生100円
- 団体(100名以上) : 大人400円、中高生240円、小学生100円
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実際に訪れてみた、明峰山石応禅寺「釜石大観音」
上で3体の「巨大仏」をご紹介させていただきましたが今回私は岩手県釜石市の「釜石大観音」へと訪れてみました。私個人は何か強い信仰を持っているわけではなく、失礼ながら「実家の墓が~、、」程度ですので訪れた理由は単純に「観光」です。
ただ、「釜石に巨大な観音様がある」というのは以前から聞いていましたのでワクワク、ドキドキしながらの稚拙なレポートになりますが皆様もう少々本文にお付き合いください。
歓迎、釜石大観音
釜石大観音は岩手県釜石市大平町にあり、岩手県立釜石商工高等学校の目と鼻の先で大平町鎌崎半島に所在しています。敷地面積は広く、敷地内には釜石大観音の他に山門、不動殿、仏舎利塔、そして無料駐車場は大型バス 15 台、乗用車 150 台分の広さもあります。
前情報なしに訪れた私が一番驚いた事は、この釜石大観音の山門前には仲見世通りがある事。
釜石大観音仲見世通り
上の写真でも見て分かる通り、現在は大分廃れてしまいそのほとんどが閉店していますがかつては賑わいに溢れ、東京浅草の仲見世商店街なみに活気に満ち溢れていたのではないかと伺えます。勘違いしてほしくないのがすべてのお店が閉店しているわけではありませんし、釜石大観音仲見世通りが消滅したわけでもありません。
現在も地元の次の担い手の方たちが旧店舗をリノベーションしたりして再オープンしているのも数店伺えます。どの店舗も外観がお洒落で好感わくお店です。WEBサイトもしっかりと作りこまれてますのでお時間ある方は下記リンクから覗いてみてください。
釜石大観音仲見世通り 公式ホームページ
釜石大観音仲見世通りを過ぎ、山門へ
この山門から石応禅寺、釜石大観音へと登る事になります。山門の両脇には1976年7月落慶の京仏師・佐久間白雲師、佐久間渓雲師の手による阿・吽の二体の仁王像が安置されています。
山門をくぐり、発券所へ行き拝観料をおさめ、いざ釜石大観音へ!と向かうと目の前に入口が、雨風をしのぐための室内型の階段か?と思うと驚愕、、中に入ると
なんと目の前にエスカレーターが見えます。
愛に溢れております、。徒歩で向かうことも出来ますがもちろん私はエスカレーターを利用します。もうこれは一種のアトラクションと考えています。
長さ37mほどのエスカレーターを登ると目の前に釜石大観音の背面が現れます。
釜石大観音
釜石大観音は海抜120mの位置にあり、前方には釜石湾が広がります。遠くは馬田岬、尾崎半島まで、陸中海岸国立公園の雄大なリアス式海岸を見ることができます。
そして釜石大観音は2016年にプロポーズにふさわしいロマンチックなスポットとして「恋人の聖地」に選定されています。釜石出身の女性がデザインしたモニュメントと「願いの鐘」があり、モニュメントの前で写真を撮ったり、恋愛成就の願いを込めて鐘を鳴らしたりと、新たな恋愛成就のパワースポットとしてたくさんの人が訪れています。
私一人で訪れていますが釜石大観音の愛に触れ、そして釜石湾をゆっくりと堪能しましたので、今からいざ釜石大観音の胎内へと潜ろうと思います。
三十三観音のひとつ、魚籃観音の姿「釜石大観音」
釜石大観音は「魚籃観音(ぎょらんかんのん)」の姿をしており、これは三十三観音に数えられる観音菩薩の一つで釜石大観音公式ホームページからの引用になりますが魚籃観音とは
無信仰の地であった河南省のある村に、魚籃(魚カゴ)を下げた美しい娘が魚を売りに訪れた。土地の若者たちは競って嫁にほしいと申し入れたが、困った娘は、「観音経」「金剛経」「法華経」を暗誦した者を夫にすると約束した。
釜石大観音 魚籃観音の由来
3つの経典を見事暗誦した若者と娘は結ばれたが、間もなく娘は病にかかり、不帰の客となってしまう。葬送して数日後、紫衣の老僧の指示により墓を掘ったところ、そこには娘の屍はなく、黄金の鎖骨のみが残されていた。この娘は法華経を広めるために現れた観音大士の化身であるとされ、以後、魚籃観音として信仰されるようになった。
とされています。
胎内に入るとエレベーターはなく、階段での拝観になります。トイレも男性が1階、女性が2階のみとなりますので先に済ませておくことをお勧めします。
胎内には観音様が衆生を救うためさまざまな姿に変化した三十三の楠の一木造り・鉈彫り様式で表現した三十三観音が展示されています。
そして2階から11階の各階には木彫りの七福神が祀られています。。ん?11階、、?そうです。釜石大観音は11階、そして展望箇所の12階まで階段のみで登る事になります。
階段の幅はバラバラで狭い箇所も数か所あります。下りも同じ階段ですので他の拝観者の方たちとすれ違う際には十分にお気を付けください。
12階まで登ると「魚籃展望台」となり、魚籃観音が両手にもつ魚の上から釜石湾を一望することができます。ただし、展望スペースはあまり広くはなく、鉄柵でのバリケードのため高所恐怖症の私は写真一枚を撮るのがやっとの思いでした。高所や絶景好きの方は大満足だと思いますよ。
ここを最終目的地とし、あとは登ってきた階段を降りることになります。
釜石大観音の足元には売店もありますので拝観後にお土産を購入するのもおススメです。
まとめ
これにて今回の釜石大観音のレポートは完了となります。
どの観音様(巨大仏)も宗教・信仰の対象となるもので、軽んじてみるものではありませんが「巨大仏」として調べてると、どの場所も宗派ではないから来客をお断りします。というわけではありません。
観光の一環として、そして一つのテーマパーク的な場所として訪れてみるのも良いかもしれませんね。