【山形県新庄市】日本一の山車行列といわれる重要無形民俗文化財・新庄まつり

「新庄まつり」は、山形県北部にある旧城下町新庄市で、毎年8月24日~26日の3日間開催される夏祭りです。“日本一の山車(やたい)行列”といわれるほど豪華絢爛な山車が市中を巡航し50万人以上の観光客が訪れます。


新庄藩主が領民を勇気づけようと始めた祭

「新庄まつり」は、江戸時代中期の1756年(宝暦6年)に、新庄藩5代藩主戸沢正諶(とざわまさのぶ)が冷害による大凶作にうちひしがれている領民を元気づけようと、領内をあげて祭りを開いたのが起源といわれています。当時の祭りは現在のような大がかりなものではなく、戸沢家の氏神である天満宮の祭りをもとにして、山車は民家にあるものを持ち寄り飾り付けていました。

明治31年当時の新庄まつり ©山形県

豪華絢爛な20台の山車が市中を巡航

屋台パレード ©新庄市

「新庄まつり」が現在のようになったのは昭和になってからで、20台の山車と神輿(みこし)とともに200人もの侍や神官の格好した人たちが練り歩く神輿渡御行列(みこしとぎょぎょうれつ)、それに新庄城址最上公園(もがみこうえん)で舞われる風雅な萩野鹿子踊(はぎのししおどり)・仁田山鹿子踊(にたやまししおどり)など、藩政時代をしのばせる歴史絵巻が次々と繰り広げられます。祭り期間中、市中はまつり囃子が響きわたります。

「新庄まつり」は国指定重要無形民俗文化財および「山・鉾・屋台行事」としてユネスコ無形文化遺産に登録されています。


「新庄まつり」の日程

8月24日「宵まつり]

宵まつり ©やまがたへの旅

「新庄まつり」は、24日午前8時30分、新庄城址最上公園内にある戸沢神社、護国神社、天満宮(天満神社)での新庄囃子の奉納で幕を開けます。その後10時頃から戸沢神社の例大祭が開かれ、夜6時に灯入(ひいれ)式で宵まつりの始まりです。

午後7時には各町内に格納されている山車が、こどもたちに引かれて動き出します。昼間に見ても華やかな山車に灯りがともり、さらに豪華絢爛に。光と影が織り成す幻想的な山車は圧巻です。市中を巡航した山車が最後に新庄駅前広場に集結して宵まつりは終了します。


8月25日[本まつり]

神輿渡御行列 ©旅東北

本まつりは25日午前9時頃に天満宮でご神体を神輿に移す神事から始まります。その後、戸澤神社に集結した、武士や足軽、神官の装束に身を包んだ200人あまりの氏子による、神輿渡御行列が神社を出発します。足軽の独特な足取りや行列の中で行われる曲芸など見どころも十分。行列が出発した1時間後には山車の行列が始まります。


8月26日[後まつり]

萩野鹿子踊 ©旅東北

午後からは山車全20台が市内中心街に集結し展示する飾り山車が行われ、南本町十字路で街中鹿子踊が披露されます。

午後5時頃に手締め式が催行され「新庄まつり」の閉幕です。


町ごとに題材を決め、市民が飾り付ける山車

各若連が趣向を凝らし製作した山車 ©旅東北

「新庄まつり」の花形、山車は20台ありますが、町ごとに若連という組織があり、町単位で1台の台車を作ります。飾りの題材は歴史物語や伝説、能、歌舞伎などで、等身大の人形を中心に、風景や建物・花・滝などを周りに配すのが一般的です。青森のねぶた祭では“ねぶた師”と呼ばれるプロが山車の製作に関わりますが、新庄まつりではプロではなく、自分の仕事が終わったあと集まり、1か月あまりかけて飾り付けを行っています。


「新庄まつり」の拠点となる最上公園(新庄城址)

戸沢神社、天満神社、護国神社が鎮座する新庄城址最上公園 ©やまがたへの旅

最上公園(もがみこうえん)は、新庄藩初代藩主戸沢政盛(まさもり)が1625年に築いた新庄城の跡地を公園として整備したもので、戸沢神社、天満神社、護国神社が祀られています。

新庄城の天守閣は1636年に起きた火災で焼失し、その後は再建されませんでした。戸沢氏は明治になるまで243年間この地を居城としていましたが、明治初期に勃発した戊辰戦争で完全に焼失してしまい,

今は残っていません。


新庄藩主戸沢家の氏神[天満神社]

天満神社は、戸沢氏代々の氏神として崇拝されてきた神社です。建物は1628年に初代藩主政盛が建立したもので、1668年に二代藩主正誠(まさのぶ)が再建したと伝わっています。天満神社本殿・拝殿は山形県指定有形文化財です。


戸沢家の功績を称える[戸沢神社]

神輿渡御行列が出発する戸沢神社 ©新庄市

戸沢神社は1894年(明治27年)に創建された、戸沢家始祖衡盛(ひらもり)と藩祖政盛、最後の藩主十一代正実(まさざね)を祀っています。戊辰戦争の際新政府軍に属していた戸沢藩は、旧幕府軍だった庄内藩に攻められ落城してしまいました。旧幕府軍が新政府軍に制圧されたのち、正実は新庄県の知事に任命されています。


戊辰戦争以降の戦死者を慰霊[護国神社]

護国神社は、戊辰戦争の戦死者を慰霊する神社として1869年(明治2年)に戸沢正実が創建した神社です。1891年(明治24年)に新庄城址に移転され現在に至っています。


新庄まつりに欠かせない萩野鹿子踊・仁田山鹿子踊

仁田山鹿子踊 ©旅東北

新庄市の荻野と仁田山という集落に古くから伝わる民俗芸能で、その発祥など詳しいことは分かっていません。ただ、荻野、仁田山以外にも鹿子踊りはあったようで、最上義光が領内の鹿子踊りを集めて踊らせたという記録があります。その際に義光が荻野の鹿子踊りとみられる踊りを見て「最も良し」と言ったという記述もあることから、少なくとも360年以上前からあったものと推定されています。

鹿子踊とは、頭に鹿の頭部の形をしたかぶり物(頭/かしら)を付けて、体には布を垂らして踊るもので、全国にさまざまなかぶり物や振り付けの鹿子踊が残っています。「新庄まつり」で踊られる鹿子踊はカモシカを模したかぶり物が使われていて、全国的にも大変珍しい鹿子踊です。萩野鹿子踊・仁田山鹿子踊は山形県無形民俗文化財に指定されています。

INFORMATON


  • 新庄まつり
  • 所在地:山形県新庄市内
  • 電話番号:0233-22-6855 (新庄まつり実行委員会)
  • 開催日:8月24日、25日、26日
  • アクセス:車/東北中央自動車道新庄ICから約5分 鉄道/山形新幹線新庄駅下車 ※「新庄まつり」当日は公共交通機関を利用おおすすめ
  • URL: 新庄まつり

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