【福島県いわき市小名浜】小名浜マリンブリッジの開通で、再び活況を取り戻した小名浜

小名浜(おなはま)は、福島県南部に位置するいわき市にある福島県最大の小名浜港をかかえる港町です。

小名浜港。左の突堤にあるのが「小名浜魚市場」(左)、「いわきら・らミュウ」(右)、右の突堤は「アクアマリンふくしま」。右上隅には「小名浜マリンブリッジ」の一部が写っている。©いわき市

もともと小さな漁村だった小名浜は、江戸時代には年貢米の積み出しの港町として発展し、小名浜港は江戸時代後期(1855年)には近くに発見された石炭の積み出し港としても機能しました。

常磐炭田で活況を呈した小名浜港

明治時代以降、常磐炭田の採掘量は増え最盛期には年間400万トンにもなり、日本一の産出量を誇りました。小名浜港もそれに伴い大いに発展し、町も活況を呈したのです。

その後、昭和30年代以降エネルギー産業の主流が石油に取って代わられ、石炭産業は急速に衰退します。1985年(昭和60年)には最後の鉱山が閉山し、常磐炭田は終わりを告げたのです。

もちろん小名浜は常磐炭鉱の閉山により大きな影響を受けますが、小名浜港は廃鉱になったあとも東北地方の重要港湾として整備され、また、全国有数の水揚げ高を持つ漁港として発展を続けました。

東日本大震災後、どこよりも早く復興に立ち上がった小名浜

2011年に勃発した東日本大震災は、港に大津波が襲い壊滅的な被害を与えました。小型漁船だけでなく、大型の貨物船も堤防に打ち上げられ、港としての機能を一瞬にして失ったのです。さらに、近接する福島原子力発電所の崩壊は、放射線汚染が海にも広がり、漁業にも莫大な被害が及びました。

津波で防波堤に打ち上げられた貨物船(東日本大震災) ©いわき市

大震災後しばらくは海の汚染という風評被害にも悩まされていましたが、その間にも2011年7月15日、大震災からわずか126日で水族館「アクアマリンふくしま」が、同じく7月16日に「いわきマリンタワー」が再開を果たしています。

復興のシンボル、小名浜マリンブリッジが2018年に完成

2022年現在、まだ工事専用道路だが、東高ターミナル完成後は一般開放される「小名浜マリンブリッジ」 

2018年(平成30年)3月には、小名浜港沖合に1994年(平成6年)から埋め立てられていた人工島「東港」に陸側の3号埠頭と結ぶ「小名浜マリンブリッジ」が完成し、夜はライトアップされるなど小名浜復興のシンボルとなりました。

「小名浜マリンブリッジ」は、沖合の東港がまだ工事中のため2022年現在工事専用道路としてしか共用されていませんが、東港ターミナルなどが完成後は一般道路として使用される予定です。

INFORMATION

  • 施設名称:小名浜マリンブリッジ
  • 住所:小名浜港
  • 総延長:1805m
  • 橋梁部:927m
  • 車線:片側1車線
  • 歩道部:片側のみ

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旧海軍の戦艦が埋められた小名浜港1号埠頭

小名浜港には第2次世界大戦の遺構が思わぬ形で残っています。

終戦後、我が国の復興は急速に進められましたが、鉄やコンクリートという建設資材不足が足かせとなり思うようにはかどりませんでした。小名浜港の整備も資材不足のため進められなかったのですが、そこで目をつけられたのが役割を終えた旧海軍の戦艦だったのです。

防波堤は一般的には鉄筋コンクリートで造られるのですが、小名浜港ではコンクリートの代わりに戦艦を沈めたのです。1948年(昭和23年)4月に駆逐艦「澤風」(1920年竣工)が旧魚市場前の防波堤に、それに続いて8月には同じく駆逐艦「汐風」(1921年竣工)が旧埠頭(現1号埠頭)の先端部分にそれぞれ沈められました。

1947年の「澤風」「汐風」が沈められる前の小名浜港 ©国土地理院
1952年の小名浜港 ©国土地理院
2019年の小名浜港 ©国土地理院

この沈船防波堤は全国各地に造られますが、「澤風」が日本で最初の沈船防波堤です。その後「澤風」は1965年(昭和40年)に行われた漁港区改良のため撤去されました。「澤風」の遺構はエンジンのタービン部分のみ「三崎公園」に展示保存されています。

「汐風」は1957年(昭和32年)に1号埠頭が1万トン級の船舶が停泊できる岩壁へと改修された際に、その基礎として現在も1号埠頭を支えています。現在では「汐風」の船体は確認できませんが、沈められている場所の上に船体の艦尾部分が形取られていて、沈船防波堤の解説文が掲示されています。

小名浜最大の商業施設「いわき・ら・ら・ミュウ」

“常磐もの”として名高い魚介類はじめ、いわき市の名産品が買える「いわき・ら・ら・ミュウ」

「いわき・ら・ら・ミュウ」は、沈船防波堤となっている小名浜港第1埠頭にある商業施設です。オープンは1997年(平成9年)、東日本大震災では壊滅的な痛手を受けましたが、建物の躯体はほとんど無事だったため、8か月半後の11月末には再開にこぎ着けました。

1階がすぐ近くの魚市場から仕入れた新鮮な魚介類や小名浜やいわきの名産品が並ぶマーケットと寿司、海鮮料理、ラーメン店が並ぶ食堂街になっています。こどもたちが元気いっぱいに遊べる室内プレイゾーンも人気です。2階には海鮮料理をはじめイタリア料理などの洋食も味わえるレストランやいわき小名浜を紹介するミュージアムなどがあります。

INFORMATION

  • 施設名称:いわき・ら・ら・ミュウ
  • 住所:福島県いわき市小名浜字辰巳町43-1(小名浜港1号埠頭))
  • 電話番号:0246-92-3701
  • 営業時間:
  • 物販・ライブいわきミュウじあむ/9:00~18:00
  • 飲食(1F・2F)・わんぱくひろば みゅうみゅう/10:00~18:00
  • 休館日:不定休(水曜日または木曜日が多い)
  • URL:いわき・ら・ら・ミュウ

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小名浜港内を50分で遊覧、観光遊覧船「サンシャインガール」

波静かな小名浜の港内を50分ほどで遊覧する「サンシャインガール」 ©いわき市

観光遊覧船「サンシャインガール」は、2021年4月に就航した小名浜港クルーズの観光遊覧船で、「いわき・ら・ら・ミュウ」に乗船券売場があります。クルージング時間は約50分です。

INFORMATION

  • 施設名称:観光遊覧船「サンシャインガール」
  • 電話番号:0246-38-4197
  • 運航:1日3便(不定運航・要問い合わせ)
  • 料金:おとな 1500円、シニア(60歳以上) 1350円、学生(中学生以上) 1000円、小学生以下 500円、未就学性はおとなまたはシニア1名につき2名まで無料
  • URL:観光遊覧船「サンシャインガール」

「いわきマリンタワー」や「三崎潮見台」「バーベキュー広場」などがある「三崎公園」

三崎公園の芝生広場からの「いわきマリンタワー」 ©いわき市

「いわきマリンタワー」は、小名浜港を見下ろす標高46mの台地にある広大な「三崎公園」内に建つ展望タワーで、高さは約60mあります。展望室は海抜約106mの高さにあり、スカイデッキからは小名浜港はじめ太平洋、いわき市街など360度の大パノラマが広がります。

「三崎公園」内にはマリンタワーのほか、芝生広場や遊歩道、野外音楽堂、バーベキュー広場、ホテルやレストランもあり小名浜一のリゾート施設になっています。広場の一角には沈船防波堤として沈められた「澤風」のタービンが展示されています。

真下が太平洋。ちょっと足がすくんでしまうほどスリル満点の「三崎潮見台」 ©いわき市

特に崖から太平洋に突き出す「三崎潮見台」は展望通路の先端は太平上にありスリル満点。大人気のスポットです。

INFORMATION

  • 施設名称:いわきマリンタワー
  • 住所:福島県いわき市「三崎公園」内
  • 電話番号:0246-53-2448(三崎公園管理事務所)
  • 営業時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
  • 入館料:一般 330円、中高大学生 220円、小学生 170円
  • 休館日:第3火曜日(祝日の場合は翌日)
  • 施設名称:三崎潮見台
  • 住所:福島県いわき市「三崎公園」内
  • 電話番号:0246-53-2448(三崎公園管理事務所)
  • 入場自由
  • 施設名称:三崎公園
  • 住所:福島県いわき市小名浜下神白字大作93(三崎公園管理事務所)
  • 電話番号:0246-53-2448
  • 有料施設以外公園内散策自由
  • URL:三崎公園

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いち早く復興し、震災前より元気になった「アクアマリンふくしま」

磯、干潟、浜という海辺の自然を再現した屋外エリア「蛇の目ビーチ」がこどもたちに大人気の「アクアマリンふくしま」 ©いわき市

「アクアマリンふくしま」は、小名浜港2号埠頭にある水族館です。東日本大震災の際は津波をまともに受け甚大な被害を受けたのですが、展示魚類や怪獣たちは、生命維持が不能になった外洋性魚類を除いて地震の翌日から鴨川シーワールド(千葉県)や上野動物園(東京都)、葛西臨海水族園(東京都)、伊豆三津(みと)シーパラダイス(静岡県)、新江ノ島水族館(神奈川県)に避難することができ無事でした。そして、職員はじめ関係者の努力でわずか126日後、7月15日に再開されました。

「アクアマリンふくしま」の最大の特徴は、環境再現型の展示で、その生き物が住む環境ができる限り再現され、ありのままの姿を見ることができます。

INFORMATION

  • 施設名称:アクアマリンふくしま
  • 住所:福島県いわき市小名浜港第2埠頭
  • 電話番号:0246-73-2525
  • 開館時間:3月21日~11月30日/9:00~17:30(最終入館時間16:30)、12月1日~3月20日/9:00~17:00(最終入館時間16:00)※ゴールデンウィーク、お盆休み期間中、花火大会当日など特別期間は開館時間が延長されます
  • 入館料:一般 1850円、小中高生 900円、未就学児 無料
  • 休館日:年中無休
  • URL:アクアマリンふくしま

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常磐ものやカツオなどで活況を呈する「小名浜魚市場」

カツオの水揚げで活気づく小名浜魚市場(2021年4月撮影) ©いわき市

「小名浜魚市場」は、東日本大震災で崩壊し2015年に「いわき・ら・ら・ミュウ」前に新しく建て替えられ再開しました。

小名浜港は漁港としてもカツオやサンマなどの水揚げ量が全国上位であり、“常磐もの”といわれる種類豊富な近海魚で知られています。

「小名浜魚市場」は道路側が閉鎖された造りになっていて、外側からは内部を見ることはできません。市場内部は2階に見学用のガラス張りスペースがあるので休場日(日・祝日・休日)以外は漁協事務所に申し込めば見学可能です。

INFORMATION

  • 施設名称:小名浜魚市場
  • 住所:福島県 いわき市小名浜字辰巳町41
  • 電話番号:0246-54-6121
  • 申し込み:漁協事務所
  • 市場見学可能時間:平日:9:00~16:00/土曜日:9:00~11:30
  • 休場日:日曜日、祝・休日

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