かしゃ猫のこけし(アップ)

かしゃ猫|奥会津・三島町に伝わる化け猫伝説と妖怪こけし【福島県】

福島県大沼郡三島町。俗に奥会津とも呼ばれる地域で、新潟県との県境にほど近い場所に位置する自治体です。

ここには一般的に知られている「12系統のこけし」のどの系統にも属さない「かしゃ猫こけし」と呼ばれるこけしがあり、その発祥の元となる「かしゃ猫伝説」なる妖怪の伝承が存在します。

今回はそんな三島町の「かしゃ猫」について深堀りしてみました。


三島町とは?

三島町の街並み
三島町の街並み

三島町(みしままち)は、福島県会津地方中西部に位置する町で、人口は約1,200人(2026年現在)。

只見線・会津宮下駅
只見線・会津宮下駅

町名は旧宮下村にある「三島神社」に由来し、中心部には只見線の会津宮下駅が存在します。

宮下アーチ三兄(橋)弟
宮下アーチ三兄(橋)弟

会津桐(あいづきり)と呼ばれる国内最高品質の桐材生産の中心地であり、只見線のビュースポットの一つ「宮下アーチ三兄(橋)弟」がある町としても有名です。


三島町の「かしゃ猫こけし」

「かしゃ猫こけし」は一般に知られる人型のこけしとは違う「妖怪こけし」なので、見た目は結構恐ろしい姿…。

かしゃ猫のこけし(正面)
かしゃ猫のこけし(正面)

山菜として知られるコシアブラの木を素材としていて、荒々しく削り出されたコシアブラに牙とひげが後付けされています。

かしゃ猫のこけし(横)
かしゃ猫のこけし(横)

木の形を活かして一つ一つ手作りされているので同じものが一つとしてないのも特徴で、木の形に合わせて極端に曲がっているかしゃ猫もあれば、姿勢よくピンと直立姿勢のかしゃ猫もいます。

かしゃ猫のラベル
かしゃ猫のラベル

胴体には「奥会津志津倉山 かしゃ猫 三島町」のラベルが。

サイズも形も表情も様々あるので、自分のお気に入りの一体を探すのが結構面白いです。


三島町に伝わる「かしゃ猫伝説」

妖怪だけに怖い顔をしている「かしゃ猫」。

では一体どんな妖怪なのか?三島町に伝わる「かしゃ猫伝説」は概ね以下のような内容です。

三島町に伝わる「かしゃ猫」伝説

その昔、三島町の志津倉山に化娑猫(かしゃ猫)と呼ばれる化け猫が住みつき、雨を百日降らせたと思うと日照りを百日起こし、近隣の村々に性悪な病を流行らせていました。

死者の骸を盗む「かしゃ猫」
死者の骸を盗む「かしゃ猫」

さらには村に若くして亡くなる者がいるとその骸を盗んで食らい、残っていた寿命を我がものとして生き永らえ、長くこの地方の人々を困らせていたといいます。

コシアブラの木で「かしゃ猫」を退治する弘法大師
コシアブラの木で「かしゃ猫」を退治する弘法大師

これを聞いた弘法大師は、志津倉山のコシアブラの木を使って化娑猫を退治し「猫の魔力で天の災いから人々を守り、人々の病を治す志津倉山の主になれ」と諭したとされ、それ以来、化娑猫は天災を退け人々の難病をも治す志津倉山と地域の守り神となったとされています。

志津倉山の主となった「かしゃ猫」
志津倉山の主となった「かしゃ猫」

それからこの一帯では子どもが生まれるとコシアブラの木で猫のこけしを作り、魔除けの神として玩具とする風習が伝えられるようになりました。

長郷工房「かしゃ猫の由来」参照


妖怪「火車」と関係がある?

火車(かしゃ)とは日本各地に伝わる妖怪で、葬式の最中に現れて死者の遺体を奪い去る存在とされています。

西村市郎右衛門編著『新御伽婢子』内の車型の火車 出典:Wikipedia
西村市郎右衛門編著『新御伽婢子』内の車型の火車 出典:Wikipedia

由来を辿ると、もともとは地獄で使われる拷問具の事で、該当する地獄として「火車地獄」というものが存在し、そこから亡者を乗せて地獄に連れてくる火の車輪を持つ乗物を指すように変化。

『奇異雑談集』内に収録されている鬼神(雷神)型の火車 出典:Wikipedia
『奇異雑談集』内に収録されている鬼神(雷神)型の火車 出典:Wikipedia

さらに時代が過ぎると妖怪として語られるようになり、遺体を奪いに来る鬼神を指すようになったといわれています。

そしてその後、飼い猫が年を経ると化けて人を食べたり攫ったりするようになるという妖怪「猫又」と、遺体を奪いに来る「火車」が、その似た性質から習合し、猫型の火車も語られるようになったと考えられています。

妖怪画集『画図百鬼夜行』内の「火車」出典:Wikipedia
妖怪画集『画図百鬼夜行』内の「火車」 出典:Wikipedia

妖怪画で有名な江戸時代の浮世絵師・鳥山石燕(とりやませきえん)は自身の妖怪画集『画図百鬼夜行』の中に猫型の火車を描いています。

なのでその姿は

  • 炎に包まれた車輪を持つ車
  • 雷鳴とともに現れる鬼神(雷神)
  • 猫の姿をした魔物

など、様々に語られてきました。

三島町のかしゃ猫も遺体を攫っていくという「火車」の性質を含んでいるので「猫型の火車」から派生した可能性は十二分にあると思われます。もともとは「火車猫」だったのかもしれません。

参考


「かしゃ猫こけし」が購入できる場所

かしゃ猫こけしは「三島町観光交流舘からんころん」「道の駅尾瀬街道みしま宿」で購入できます。どちらとも三島町の観光の拠点ともなる施設なので、訪れた際は足を運んでみてください。

三島町観光交流舘からんころん<Information>

三島町観光交流舘からんころん
三島町観光交流舘からんころん

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道の駅 尾瀬街道みしま宿<Information>

道の駅 尾瀬街道みしま宿
道の駅 尾瀬街道みしま宿

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東北を代表する民芸品「こけし」に「妖怪こけし」なんていうものが存在することは全く知りませんでした…。

かしゃ猫のこけし(斜めアップ)

隣接する柳津町が「赤べこ」発祥の地であることも考えると、もしかすると奥会津は郷土玩具の宝庫なのかもしれません…。観光に訪れた際はぜひ「かしゃ猫こけし」を手に取ってみてください。


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