加勢鳥(山形県上山市)

藁蓑をかぶった神の化身「加勢鳥」は「カッカッカー!」の掛け声が楽しい上山市の民俗行事【山形県】

加勢鳥とは?

加勢鳥(かせどり)とは山形県上山市で毎年2月11日に執り行われる民俗行事で、「歳神様の来訪行事」として元々は小正月(諸説あるが大体1月14日から16日の期間)に行われていました。

来訪神行事の一種である加勢鳥
来訪神行事の一種である加勢鳥

「歳神様の来訪行事」であるということからわかるように、男鹿のナマハゲに代表される来訪神の性格をもつ行事で、藁で編んだ「ケンダイ」と呼ばれる円錐形の蓑を被ることで神の化身(加勢鳥)と化し、「カッカッカーのカッカッカー!」の掛け声とともに市内各所を練り歩き「五穀豊穣」「火の用心」「商売繁盛」「家内安全」等を祈願します。

名前の由来には諸説あり、商売繁盛にちなむ「稼ぎ鳥」、火伏せにちなむ「火勢鳥」など、様々な説が存在します。

「祝い水」や「手拭い巻き」に縁起物の「藁」

江戸時代の大火の際に「火喰い鳥が空を舞って類焼を広げたように見えた」という言い伝えがあることから、沿道の住民・見物客は加勢鳥に「祝い水」と呼ばれる水を手桶や柄杓で浴びせることで「火伏せ」を祈願します。

加勢鳥に祝い水をかける様子
加勢鳥に祝い水をかける様子

ちなみに藁で編まれたケンダイは通常で4kg〜6kgあり、水を含むと10kg〜12kg程度まで重さが増加するとか。

頭部にタオルが巻かれた加勢鳥
頭部にタオルが巻かれた加勢鳥

さらに加勢鳥の頭部に新しい手ぬぐい・タオルを結び付けることで「家内安全」「商売繁盛」等を祈願し、ケンダイから抜け落ちた藁にも縁起物の性格があり、女の子の髪に結いつけると髪が黒く美しくなると伝えられています。

縁起物の藁

ケンダイから自然と抜け落ちた藁が縁起物とされていて、加勢鳥から直接引き抜くのはNGです。


加勢鳥の歴史

御前加勢と町方加勢

始まりの頃の加勢鳥は「御前加勢」「町方加勢」の二つに分類され、「御前加勢」には江戸時代の寛永年間(1624年から1644年)頃に始まったという記録があります。

御前加勢の再現と思われる上山城正門前広場での演舞
御前加勢の再現と思われる上山城正門前広場での演舞

御前加勢は、毎年の旧正月13日に上山城へ昇殿を許された高野村(現在の山形県上山市高野または高野字高野原)の若衆3人が御前で加勢鳥を披露し、現代と同様に手桶や柄杓で水をかけられ、酒と銭一貫文でねぎらいを受けたといわれています。

町方加勢の再現と思われる上山市内練り歩きの様子
町方加勢の再現と思われる上山市内練り歩きの様子

町方加勢は毎年の旧正月15日に行われ、周辺各村から集まった若衆が商家の連なる町中で家々を訪ね歩き、家人の願いを聞き、引き換えに祝儀や酒・切り餅でもてなされたそうです。

明確な起源の記録がない町方加勢ですが、おそらく御前に召し出されて披露することになるということは、お殿様が加勢鳥を観たいと思って呼んだ…ということなので、御前加勢より前から町方では行われていたのではないか?と考えられます。

明治期の中断

明治期に入ると「旧藩時代に重要視された行事」として廃止の宣告を受け、御前加勢が廃止となります。

廃止に至った具体的な法令や行政措置については明確な記録が確認されていませんが、明治期は全国的に廃仏毀釈・風俗取締・祭礼統制などが行われた時代なので、その余波を受けたものだと思われます。

町方加勢は防火の慣習であるとして継続しますが、結局1896年(明治29年)に廃止に追い込まれ、加勢鳥の歴史は以降約60年に渡って一度完全に途絶えてしまいます。

昭和期に保存会が結成され現在へ

復活の契機となったのは1954年(昭和29年)の町村合併による新しい上山市の誕生で、企図されて5年後である1959年(昭和34年)に有志によって復活しました。

しかし当時すでに途絶から約60年の年月が経過していることもあり、誰も加勢鳥を実際には見たことがなく、復活は手探りの取り組みだったといわれています。

その後1986年(昭和61年)に上山市民俗行事加勢鳥保存会が結成され、秋田県の劇団わらび座の協力を得て、演舞や太鼓・笛の囃子が創作され現在へと至ります。


現在の加勢鳥

上山城正門前広場で行われる祈願式
上山城正門前広場で行われる祈願式

現在の加勢鳥は

  • 上山城正門前広場での祈願式(神事)
  • 上山城正門前広場での演舞
  • 上山市内練り歩き

といった流れで「御前加勢」「町方加勢」の双方を再現する形で行われます。

「上山市内練り歩き」は加勢鳥が複数班に分かれて行われるので、当日上山市を訪れると至る所で加勢鳥と出会うことができます。

加勢鳥<Information>

  • 名  称:上山市民俗行事「加勢鳥(かせどり)」
  • 開催場所:上山城及び上山市内
  • 日  程:2月11日
  • 開催時間:10~15時頃
  • URL:やまがたへの旅 – 上山市民俗行事 加勢鳥

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