
紅葉と温泉、とびきりの癒し。山間に7つの湯が湧く『乳頭温泉郷』
目次
『乳頭温泉郷(にゅうとうおんせんきょう)』は、秋田県中西部、角館や田沢湖で有名な仙北市の山間部、岩手県境にそびえる乳頭山(にゅうとうさん標高1478m)を水源とする先達川(せんだつがわ)に沿って湧く7つの温泉の総称です。一帯は十和田・八幡平国立公園に指定され、先達川沿いの道路(県道194号)は、最奥の「黒湯温泉」で行き止まりになっていて、車では秋田県側から岩手県側へ抜けられません。
10月中旬から11月中旬は紅葉に染まる乳頭温泉郷

『乳頭温泉郷』の7つの温泉は、下流域から上流に向かって鶴の湯(つるのゆ)、休暇村乳頭温泉郷(きゅうかむらにゅうとうおんせんきょう)、妙乃湯(たえのゆ)、大釜温泉(おおかまおんせん)、蟹場温泉(かにばおんせん)、孫六温泉(まごろくおんせん)、黒湯温泉(くろゆおんせん)です。泉質も多種多様で、すべての温泉に入浴可能な“湯めぐり帖”(宿泊客専用・2,500円)も販売され、各温泉をめぐる循環バス“ゆめぐり号”が運行されています。環境省の国民保養温泉に指定されています。
『乳頭温泉郷』は、いつの季節でも訪れる人を失望させることはありませんが、特におすすめなのが紅葉の季節です。10月中旬から11月中旬にかけて温泉に入りながら色づいた木々の中で過ごすひとときは格別です。
乳頭温泉郷 Information
- 施設名称:乳頭温泉協同組合
- 湯めぐり帖:おとな 2,500円、こども 1,000円 ※乳頭温泉郷宿泊客専用
- URL:乳頭温泉郷
- アクセス:
- 公共交通機関/秋田新幹線・JR田沢湖線田沢湖駅から乳頭温泉郷行き路線バスで各温泉指定バス停下車、秋田空港から乳頭温泉郷行きエアポートライナーで約2時間10分
- 車/東北自動車道盛岡ICから約1時間
入り口に建つかやぶき屋根の長屋は江戸時代のもの。宿泊棟として今なお使用する温泉宿「鶴の湯温泉」

鶴の湯は、『乳頭温泉郷』の一番手前にある温泉です。宿は2軒あり、「鶴の湯温泉」と鶴湯別館「山の宿」です。乳頭温泉郷行き路線バスが通る県道から3kmほど林道に入ったところにあります。自家用車は宿前まで行けますが、路線バスを利用する場合は、少し手前のアアルパこまくさ]バス停で降りて送迎車に乗り換えます。「鶴の湯温泉」「山の宿」に最も近い鶴の湯温泉口バス停で降りて歩くことも可能ですが、山道なのでおすすめできません。
『乳頭温泉郷』では最も古くからある鶴の湯。記録では1638年に2代目久保田藩(秋田藩)藩主佐竹義隆(さたけよしたか/1611年~1672年)が湯治に訪れたと記されています。一般客の台帳は元禄時代(1688年~1704年)から残っています。
「鶴の湯温泉」入り口にある茅葺き屋根で長屋形式の建物は、佐竹義隆が逗留する際に警護の者が詰めていた本陣で、国登録有形文化財です。現在は宿泊棟として使用されています。

「鶴の湯温泉」は、敷地内から“白湯”“黒湯”“中の湯”“滝の湯”と呼ばれる泉質の違う4本の源泉が湧出しています。源泉ごとに湯屋が作られていて、その中心には混浴の大露天風呂があります。混浴露天風呂の温泉は“白湯”です。すべての温泉が源泉かけ流しで使用されています。日帰り入浴も可能です。
源泉名:白湯
- 泉質:含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物・炭酸水素泉(硫化水素型)
- 主な効能:美人の湯。別名冷えの湯
- 卵の腐ったような匂い(硫化水素臭)のする乳白色のきれいな色の温泉です。少し塩味があり美人の湯といわれています。
源泉名:黒湯
- 泉質:ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉
- 主な効能:ぬぐだまりの湯(よく温まる湯)・子宝の湯
- 少し硫化水素臭のする灰色がかった白濁の温泉です。
源泉名:中ノ湯
- 泉質:含重曹・食塩硫化水素泉
- 主の効能:眼っこの湯
- 硫黄泉の一種です。硫化水素臭のする温泉で、万病に効くともいわれています。基本的には白濁ですが季節や天候によって少し色が変わります。
源泉名:滝の湯(打たせ湯)
- 泉質:含硫黄-ナトリウム-塩化物・炭酸水素泉
- ※いずれの源泉もかけ流しで使用
- ※「山の宿」は白湯を引いています
鶴の湯温泉 Information
- 施設名称:秘湯 鶴の湯温泉
- 住所:秋田県仙北市田沢湖田沢字先達沢国有林50
- 電話番号:0187-46-2139
- 携帯電話:通話可(NTTdocomoのみ)
- Wi-Fi:宿泊者のみフリー
- 宿泊料など:オフィシャルホームページまたは旅行予約サイト参照
- 日帰り入浴料金:おとな 700円、こども 300円
- URL:秘湯 鶴の湯温泉
- 施設名称:鶴の湯別館 山の宿
- 住所:秋田県仙北市田沢湖田沢字湯ノ岱-1
- 電話番号:0187-46-2100
- 携帯電話:通話可(NTTdocomoのみ)
- Wi-Fi:宿泊者のみフリー
- 宿泊料など:オフィシャルホームページまたは旅行予約サイト参照
- URL:鶴の湯別館 山の宿
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洋室もありファミリー向けの「休暇村 乳頭温泉郷」

「休暇村 乳頭温泉郷」は、路線バスのバス停が目の前にある、『乳頭温泉郷』の中でいちばん交通の便が良く、近代的な施設の宿です。和室と洋室がありお年寄りや小さいお子さん連れでもゆったり過ごすことができます。
「休暇村 乳頭温泉郷」の源泉は単純硫黄泉とナトリウム-炭酸水素塩泉の2種類。内湯に露天風呂が併設された単純硫黄泉の[田沢湖高原の湯]と、ナトリウム-炭酸水素塩泉を使用した内湯だけの[乳頭の湯]があり、いずれも男女は同じ造りになっています。日帰り温泉はいずれも温泉も利用できますが、貸し切り風呂は用意されていません。

休暇村乳頭温泉郷 Information
- 施設名称:休暇村乳頭温泉郷
- 住所:仙北市田沢湖生保内字駒ケ岳2-1
- 電話番号:0187-46-2244
- 携帯電話:通話可(NTTdocomo・au・SoftBank)
- Wi-Fi:フリー
- 温泉:単純硫黄泉/ナトリウム-炭酸水素塩泉
- 効能:
- 単純硫黄泉/慢性皮膚病、慢性婦人病、切り傷、糖尿病など
- ナトリウム-炭酸水素塩泉/切り傷、やけど、慢性皮膚病など
- 宿泊料など:オフィシャルホームページまたは旅行予約サイト参照
- 日帰り入浴料金:おとな 800円、こども 400円(4歳~小学生)
- URL:休暇村乳頭温泉郷
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川のせせらぎが心地よい、もてなしがうれしい女性に人気の「妙乃湯」

「妙乃湯」は、バス停妙乃湯温泉前下車すぐのところにあり、先達川沿いに建つ川の流れを見ながら入れる露天風呂が評判の宿です。源泉はマグネシウム・カルシウム-硫酸塩泉と単純温泉の2つあります。
湯船は貸切風呂を含めて8つあり、夜8時には男女が入れ替わるので、1泊ですべての湯船を堪能することができます。

マグネシウム・カルシウム-硫酸塩泉は“金の湯”と銘打たれ、色は基本的には茶褐色ですが、季節や温度、天候などによって変化します。酸性で、鉄分や硫黄分が含まれる殺菌力のある温泉です。一方の単純温泉は無色透明で、中性で肌に優しい柔らかな湯です。
純和風の落ち着いた館内が魅力の、行き届いたもてなしが心地よい宿です。
妙乃湯 Information
- 施設名称:妙乃湯
- 住所:秋田県仙北市田沢湖生保内字駒ケ岳2-1
- 電話番号:0187-46-2740
- 携帯電話:通話可(NTTdocomo・au・SoftBank)
- Wi-Fi:フリー
- 温泉:
- マグネシウム・カルシウム-硫酸塩泉/単純温泉(いずれも源泉かけ流し)
- 効能:
- マグネシウム・カルシウム-硫酸塩泉/慢性皮膚病、動脈硬化、切り傷、やけどなど
- 単純温泉/神経痛、関節痛、冷え性、疲労回復、健康増進など
- 宿泊料など:オフィシャルホームページまたは旅行予約サイト参照
- 日帰り入浴料金:おとな 1,000円、こども 500円(小学生以下)
- URL:妙乃湯
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旧木造小学校が温泉宿に。ノスタルジックな佇まいの「大釜温泉」

「大釜温泉」は路線バス“乳頭温泉”バス停のすぐ前にあります。一軒宿で、建物は1977年(昭和52年)に秋田県由利本荘市で建て替えることに決まった小学校の建築資材を譲り受けて建てたもの。昔の木造校舎がほとんど再現されています。
温泉は自家源泉で、泉質は酸性含ヒ素-ナトリウム-塩化物硫酸塩泉。酸性の温泉です。色は灰褐色の濁り湯で、季節や気温によって変化します。泥状の残留物が多く、泥パックもできるほどです。効能は酸性のため皮膚病や水虫に効果があるとともに、カルシウム-硫酸塩泉の高血圧症、動脈硬化症、脳卒中、慢性関節性リウマチなどに適応症があります。

浴室は男女別に内湯と露天風呂があり、湧出温度が98℃と高いため加水して適温にしてあります。湯船は内湯にはあつ湯とぬる湯があり、露天風呂は冬でも利用可能です。館外の足湯はグリーンシーズン(4月1日~10月31日)限定ですが、宿泊客以外でも無料で自由に温まれます。
大釜温泉 Information
- 施設名称:大釜温泉
- 住所:秋田県仙北市田沢湖田沢字先達沢国有林
- 電話番号:0187-46-2438
- 休業日:木曜日(宿泊・日帰り入浴とも)
- 携帯電話:通話可(NTTdocomo・au・SoftBank)
- Wi-Fi:フリー
- 温泉:酸性含ヒ素-ナトリウム-塩化物硫酸塩泉
- 宿泊料など:オフィシャルホームページまたは旅行予約サイト参照
- 日帰り入浴料金:おとな 600円、こども 300円(中学生以下)
- URL:大釜温泉
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森に囲まれた露天風呂が人気。透明な温泉がやさしく温めてくれる「蟹場温泉」

「蟹場温泉」は、路線バス終点“乳頭温泉蟹場温泉”バス停下車、すぐのところにあります。秘境の宿としては少し大きめな一軒宿で、付近の沢に沢ガニが多く住んでいることから名付けられました。部屋は15室でベッドルームもあります。
「蟹場温泉」が発見されたのは1846年といわれる歴史ある温泉です。泉源は2カ所ありますが、泉質はいずれも単純硫黄泉で、森に囲まれた大きな混浴露天風呂が人気になっています。
混浴露天風呂は本館建物から50mほど離れたところにあり、すぐ脇から大量の温泉が湧き出しています。色は無色透明でもちろんかけ流し。湯の使用温度は40℃くらいのややぬるめで、長い時間入っても湯あたりしない気持ちの良い温泉です。温泉はほかに男女別に内湯があります。
効能は慢性皮膚病、慢性婦人病、切り傷、糖尿病などで、女性にはうれしい弱アルカリ性の美肌の湯です。
蟹場温泉 Information
- 施設名称:秘湯の湯 蟹場温泉
- 住所:秋田県仙北市田沢湖田沢字先達沢国有林
- 電話番号:0187-46-2021
- 携帯電話:通話可(NTTdocomo以外場所による)
- Wi-Fi:フリー無料
- 温泉:単純硫黄泉
- 効能:慢性皮膚病、慢性婦人病、切り傷、糖尿病など
- 宿泊料など:オフィシャルホームページまたは旅行予約サイト参照
- 日帰り入浴料金:おとな 800円、こども 400円(小学生)、乳児 200円
- 日帰り入浴休業日:水曜日
- URL:蟹場温泉
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2025年春リニューアルで驚きの大変身。秘湯の高級温泉宿「孫六温泉 六庵」

「孫六温泉」は『乳頭温泉郷』最奥部にある温泉です。『乳頭温泉郷』の中でも昔ながらの温泉宿として人気がありましたが、後継者がいないため惜しまれつつ2022年(令和4年)に休業を余儀なくされてしまいました。しかし、『乳頭温泉郷』に「孫六温泉」はなくてはならない温泉と、温泉郷関係者が話し合い、大改装を施し2025年4月に通年営業の宿としてリニューアルオープンしたのです。
宿名も「孫六温泉 六庵(ろくあん)」とし、今までの『乳頭温泉郷』にはない、“山の薬師湯”と知られる秘湯はそのままに、プライベート感のある高級宿”へ生まれ変わりました。

浴場は「唐子(からこ)の湯」と「石の湯」があります。「唐子の湯」には内湯のみで単純温泉が、「石の湯」は混浴で内湯と露天風呂があり、単純硫黄泉が引かれています。客室付き露天風呂は単純硫黄泉です。
すべての温泉が量の多少はあっても硫化水素臭のする硫黄分を含んでいて、湯の色は無色透明ないし少し灰色に濁っています。季節や温度によって変わるのもまた温泉の魅力の1つです。

「孫六温泉」を訪れる方法は路線バスだと「大釜温泉」前の乳頭温泉バス停から徒歩で約15分~20分、送迎もあります。車の場合、グリーンシーズンは直接宿前までは入れますが、冬季(11月下旬~3月いっぱい。積雪量によって変わります。要問い合わせ)は、「大釜温泉」前の専用駐車場に車を止めて、15~20分ほど歩きます。雪道のため長靴などの用意をしましょう。
孫六温泉 Information
- 施設名称:孫六温泉 六庵
- 住所:秋田県仙北市田沢湖田沢字先達沢国有林
- 電話番号:0187-46-2224
- 携帯電話:通話可(NTTdocomo・au・SoftBank)
- Wi-Fi:フリー
- 泉質:単純温泉、単純硫黄泉、含放射能-単純硫黄泉[硫化水素型]
- 効能:胃腸病、皮膚病(ジンマシン)、創傷、糖尿病など
- 宿泊料など:オフィシャルホームページまたは旅行予約サイト参照
- 日帰り入浴料金:おとな 700円~、小学生以下 400~円
- URL:孫六温泉 六庵
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周辺から黙々とあがる湯煙。『乳頭温泉郷』で最もワイルドな「黒湯温泉」

「黒湯温泉」は、先達川の最も源流部にある温泉です。路線バスの終点「乳頭蟹場温泉」前バス停で下車し、歩いて約15から20分のところにあります(送迎あり)。車では温泉まで行くことができます。宿は雪深い奥地にあるため冬季休業です。営業期間は4月上旬から11月上旬となります。
敷地内には硫黄泉独特の匂いが漂い、熱い温泉が湧き出す、小規模ですが雲仙温泉や登別温泉みたいな源泉地帯があります。温泉はあふれ出る源泉から直接引かれ、野趣あふれる湯浴みが魅力です。
「黒湯温泉」の発見は古く、江戸時代の1670年代といわれていて、鶴の湯と同様に、秋田佐竹藩の御用湯でした。
湧き出している源泉の泉質は2種類あり、おのおの上の湯と下の湯に注がれています。上の湯には本館から少し離れたところにあり、源泉から木の樋に導かれて冷まされた温泉が流れ込む屋根付きの混浴露天風呂と混浴内湯があります。混浴露天風呂は湯畑が見渡せるものすごくワイルドな温泉です。

上の湯から少し坂を下ったところにある下の湯には、しっかりした木造の男女別内湯・露天風呂と打たせ湯があります。泉質は2本とも基本的には酸性の単純硫黄泉(硫化水素型)で、多少酸性度が違い、下の湯のほうがやさしい湯になっています。
『黒湯温泉』には旅館部と湯治部、茅葺きの離れ、昼食ができる食堂もあり、『乳頭温泉郷』最奥の大自然を堪能できます。
黒湯温泉 Information
- 施設名称:黒湯温泉
- 住所:秋田県仙北市田沢湖生保内字黒湯沢2-1
- 電話番号:0187-46-2214
- 携帯電話:通話可(NTTdocomo・au/SoftBank場所による)
- Wi-Fi:フリー
- 温泉:単純硫黄泉(硫化水素型)
- 効能:高血圧症・動脈硬化症・末梢循環障害・リウマチ・糖尿病など
- 宿泊料など:オフィシャルホームページまたは旅行予約サイト参照
- 日帰り入浴料金:おとな 800円、こども 400円(小学生)
- 営業期間:4月中旬~11月上旬
- URL:黒湯温泉
- ※掲載の料金・設備、営業時間、休業日、携帯電話、Wi-Fi等は2025年9月現在です
- ※クマの出没が多くなっています。鈴やホイッスル、クマ撃退スプレーなどを所持し、単独行動を避けるなど十分に気をつけて行動してください。またスズメバチにも注意してください