E10系外観

東北新幹線に登場予定の新型車両「E10系」とは?

東北新幹線の列車に乗車すると、かなりの確率で緑色の車体にピンク色のラインが入った車両に乗ることになると思います。
JR東日本のE5系電車という車両です。
東海道新幹線の主力車両であるN700Sと並んで、現在の新幹線を代表するような車両の1つです。

E5系電車
東北・北海道新幹線用のJR東日本のE5系電車

E5系が営業運転を開始したのは2011年なので、初期に製造された車両は製造から10年以上が経過しています。
新幹線用の電車は、製造から10数年経過すると老朽化が現実の問題としてあらわれてくるので、E5系の後継となる「E10系」の登場が発表されています。
どのような車両なのでしょうか?


次期東北新幹線車両E10系はどんな車両?

東北新幹線(東京駅~新青森駅)の列車を運行するJR東日本は、2025年3月4日に、新型車両であるE10系の設計に着手すると発表しました。
2027年秋以降に実車が落成して、走行試験を行った後に、2030年度の営業運転開始を目指すことが示されています。

E10系の車体色は緑色を基調としたものになっていますが、E5系と比べると印象は大きく異なります。
このカラーリングは、東北地方の山々をイメージしたとのことです。
また、車体側面の帯が曲線になっている部分は、桜の花弁の形状を模しています。


最高速度は据え置きでも安全性を向上

1982年に開業した東北新幹線は、車両が代替わりするたびに速度を向上してきました。
E5系も、その前任にあたるE2系も、従来の車両よりも速い車両として登場してきたのです。

E2系電車
E2系電車

しかし、E10系の最高速度は、E5系と同様の時速320kmに据え置かれると発表されています。

とはいえ、最高速度は据え置きでも、走行性能が全くE5系と同じということはありません。
ブレーキ性能を高めており、制動距離をE5系と比べて15%短くしています。
加えて、地震が起きたときの揺れを吸収して、脱線や車両の損傷を防ぐ左右動ダンパを採用するなどして、安全性を高めているのです。

新技術や新素材の採用などによって、省エネ性能を高めていることも特徴です。

さらに、将来の東北新幹線で自動運転が導入されることに備えて、自動運転機能を搭載する準備が設計に反映されます。

最高速度は据え置きでも、意欲的な改良を行っています。
決してE5系と「E10系の次の世代の車両」の間の単なる中継ぎではありません。


グランクラスがない

E5系の10号車は、グリーン車よりもワンランク上の座席が設けられた「グランクラス」となっています。
しかし、E10系の最初に製造される編成においては、グランクラスが設けられないことが発表されています。
第2編成以降にグランクラスを設けるかどうかは今後検討するとのことではありますが、設置される可能性は低いと考えるのが自然でしょう。

ただしこれは、快適な移動を放棄するというものではおそらくありません。

まず、E10系では全座席に電源用のコンセントが設置されます。
E5系の場合は、半分強の編成にコンセントが設置されていない席があったので、大きな進歩といえます。

また、既に東北新幹線などで提供されている、車内で仕事や勉強がしたい人向けのサービス「TRAIN DESK」がさらに拡充されます。

TRAIN DESKの発展形
TRAIN DESKの発展形(引用:次期東北新幹線車両(E10系)を開発します

新サービスが提供される車両は、座席配置が通路を挟んで2列+2列となり(一般的に新幹線の普通車は3列+2列です)、隣の席とのスペースにゆとりができます。
2列の座席間にはディバイダが設置され、遮音性やプライバシーを高めます。
座席コンセントに加えてUSB電源も設置されます。
テーブルは幅が5cm広くなり、ノートPCとマウスを使用する乗客への配慮がなされます。

ただし、TRAIN DESKは普通の指定席と同じ料金で使用できますが、E10系のサービスが通常の料金で使用できるとは少々考え難いです。
おそらく通常の指定席料金よりも高くなると思いますが、利用しやすい価格になることを期待したいです。


荷物輸送を行うことを明示

JR東日本グループでは既に、新幹線を利用して素早く荷物を輸送できるサービス「はこビュン」を実施しています。

はこビュンのサービス拡大のため、E10系の5号車には荷物の積み下ろし専用のドアが設けられます。
荷物輸送専用のドアがあることで、荷物の動線を旅客と分けることができ、始発・終着以外の駅でも、荷物の積み下ろしが可能になるのです。


インドでも走る予定のE10系

E10系はインドでも走る予定です(正確にはE10系をベースとしてインド向けに仕様変更した車両になると思いますが)。
インドには、西部のムンバイからアーメダバードまでの508kmを2時間程度で結ぶ高速鉄道の建設計画があります。
事業費の8割は日本からの円借款の融資で賄われ、JR東日本も技術面での支援を行っています。
2017年に起工しており、開業は2027年~2030年頃と見込まれているようです。

E10系は、日本での営業運転開始が2030年度と見込まれているので、インドの高速鉄道開業には間に合わないかもしれません。
その場合は開業後に「新型車両」としてE10系が登場することになるのでしょう。


おわりに

東北新幹線と直通運転を行っている北海道新幹線は、現在新青森駅から新函館北斗駅までの路線ですが、2038年度頃を目標に札幌駅までの延伸開業を目指しています。

延伸後は、東京駅から札幌駅までを直通する列車も運行されると見込まれますが、E10系はこの東京~札幌間直通列車のために開発される車両ではありません。
E10系をベースとして、別途E10系の次の世代の車両が開発されて東京~札幌間の直通列車に充当されるとのことです。
次世代車両の詳しい仕様は明らかになっていませんが、客室内への半個室の設置や、高性能化(おそらく最高速度の向上を含む)が予想されています。

E10系の、最高速度がE5系と変わらず、グランクラスも設置されないという控えめな仕様は、まさにE5系から次世代車両登場までの間のつなぎが、E10系の主な役割であることを示唆しています。
とはいえ、決してE5系と同等の性能やコンセプトの車両ではないのは、紹介した通りです。

2030年度に営業運転を開始する予定のE10系は、老朽化したE2系や、初期に製造されたE5系と順次置き換えられていくことでしょう。
そして、東北新幹線の区間内だけを走る「やまびこ」「なすの」などに充当されて、「はやぶさ」の中でも北海道新幹線へ直通する列車には、E5系の比較的経年が浅い編成が引き続き充当されると予想されます。

北海道新幹線の札幌延伸が近づいたら、E10系がベースの次世代車両が投入されて、東北新幹線内のみの運行の列車は主にE10系によって運行されて、北海道新幹線への直通列車は次世代車両で運行される体制になるものと思われます。
東北新幹線を走る車両は、今(2025年)から15年ほどかけて一新されることになるのです。


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