焼肉といったら「マトン」でしょ?!只見町のマトン食文化を調査【福島県南会津郡只見町】

一年中いつ食べてもうまい焼肉。みなさんはどんなお肉が好きですか?

牛肉・豚肉・鶏肉・マトン……え、マトン?実は、福島県の中には「焼肉といったらマトン」な地域があります。深いコクと、独特の風味をもつマトンを、香味豊かなタレでいただく…一度ハマったら病みつきになる、只見町のマトンの魅力に迫りました。


マトンとは?ラムとの違いを解説

羊

まず「マトン」というワードに引っかかった方がいらっしゃるかもしれないので、解説します。

マトンとは、羊肉です。一般的にスーパーや肉屋で見かける羊肉は、ラムが多いかもしれません。マトンとラムの違いは、羊の月齢です。

  • ラム:生後1年未満の仔羊の肉
  • マトン:生後2年以上の大人の羊の肉

つまりラムとは若い羊の肉であり、マトンは成熟した羊の肉であることがわかります。なお生後1年以上2年未満の羊の肉は「ホゲット」と呼ばれます。

羊の月齢

一般的に、ラムは肉質がやわらかく、臭みが少ないのが特徴です。マトンは引き締まった肉質と、うま味とコクが強い味が特徴です。肉の色はマトンの方が赤みが強くなります。

「羊肉は臭みが強くて…」と苦手意識を持つ方も少なくはないでしょう。この羊肉独特の臭みは、羊がエサの植物を分解する際に発生する「フィートル」という匂いの物質が羊の脂肪内に蓄積するのが原因だそう。だからこそ月齢が若く、脂肪内のフィートル蓄積量が少ないラムは、クセが少なくなるのです。

一方で「羊肉を食べても太りにくい」というウワサを聞いたことはありませんか?このウワサのもとは、羊肉に含まれる「L-カルニチン」という栄養素が近年注目を浴びたからです。L-カルニチンの疲労回復や脂肪燃焼を促す作用が期待されています。羊肉はL-カルニチンの含有量が高く、特にマトンはラムよりも多くのL-カルニチンを含んでいるそう。

このように、ラムとマトンにはそれぞれの良さがありますので、好みで選ぶと良いでしょう。


マトンを愛する地域「只見町」とは

マトン

福島県の中でも屈指の豪雪地帯として有名な南会津郡只見町には、マトンを好んで食べる文化があります。焼肉といったら、牛肉ではなく、マトン。ラムよりも、マトン。なぜこのようなマトン文化が育ったのでしょうか。

一説によると、きっかけは緬羊飼育が盛んだった昭和時代にさかのぼります。当時の只見町の食文化は菜食が中心で、臭みのある羊肉を好んでは食べませんでした。地域住民の栄養の偏りを心配した獣医師が、町外で食べたジンギスカンに着想を得て、羊肉の自家消費を推奨。さらに緬羊飼育の普及に熱心だったとある町民が臭みをやわらげる解体・調理方法を試行錯誤し、食肉店をオープン。この働きかけにより、町内にマトンを食する習慣が根付いたとされています。

販売されたマトンは、こだわりのタレがしっかりと揉み込まれた味付け肉。そのおいしさが広まると、徐々に各家庭はオリジナルのたれを作り、羊肉が日常的に食べられるようになっていきました。当時はジンギスカン鍋は高価なものであり、調理器具をもたない住民は、裏返したスコップや波トタンを焼肉に使ったという話も残っています。それまでは好んでは食べなかった羊肉を、おいしいからと進んで食べるようになる。地域の食文化の変化は、目を見張るものがあったのでしょう。それもひとえに、貴重なたんぱく源を積極的に食べてほしいからと、地域の未来を思って工夫を続けた先人たちの熱意が起こしたムーブメントです。

時代が流れ、地域から緬羊飼育を行う畜産農家が減った後も、地域では羊肉が食べられ続けました。肉屋のラインナップが輸入肉に置き換わっても、焼き肉といったらマトン。只見町を始めとした周辺地域では、今もマトンを好んで食べる文化が残っているそうです。


マトンを味わえる名物もあり

只見駅前におしゃれな店舗を構える「味付マトンケバブカフェ」では、その名の通りマトンを使ったケバブが賞味できます。しっかりと味がついたマトンを、キャベツと共にピタパンでサンド。只見町のソウルフードがワンハンドで楽しめる手軽さが魅力です。

地域内を中心に、イベントでの出展販売もあるそうです。気になった方はぜひ、お店情報をチェックしてみてくださいね。

Information

  • 名称:味付マトンケバブカフェ
  • 所在地:〒968-0421 福島県南会津郡只見町大字只見字雨堤1018-1 只見線広場
  • 電話番号:090-6682-0141
  • URL:Instagram
  • 営業時間:9:00~16:00
  • 定休日:不定休

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只見町のマトン食文化をクローズアップ

今回は福島県南会津郡只見町のマトン食文化についてのお話でした。

マトンはラムとは異なるおいしさが魅力の羊肉です。只見町という山中の豪雪地帯にマトン食文化が広まった陰には、地域の住民の健康を願うやさしい心がありました。それまで地域で受け入れられていなかった羊肉食文化を広めるにあたっては、おいしく食べてもらうための試行錯誤が不可欠。先人たちの歩みは、尊いものです。

南会津エリアを訪れる際には、只見町のマトンもぜひ味わってみてはいかがでしょうか。


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