
等身大の張りぼてこけしが大行進!年に一度のこけしの祭典「全国こけし祭り」【宮城県】
宮城県大崎市の鳴子温泉で、毎年9月上旬に開催される「全国こけし祭り」。

東北各地の伝統こけしが一堂に会し、こけし工人による製作実演や展示販売、コンクール、絵付け体験などが行われる…まさにこけし尽くしの祭典です。
なかでも強烈な存在感を放つのが、人の背丈ほどもある「張りぼてこけし」が温泉街を練り歩くフェスティバルパレード。愛らしいような少し怖いような巨大こけしの行列は鳴子温泉の秋を代表する光景と一つです。
今回は全国のこけしファンが集う鳴子温泉「全国こけし祭り」の歴史や見どころについて、2026年9月5日・6日にわたって開催された「第71回全国こけし祭り」の様子を交えながら紹介します!
鳴子系こけしの産地「鳴子温泉」
祭りの舞台となる「鳴子温泉」は、宮城県大崎市に位置し「奥州三名湯」の一つに数えられる歴史ある温泉地。
鳴子温泉・東鳴子温泉・川渡温泉・中山平温泉・鬼首温泉からなる「鳴子温泉郷」の中心地で、平安時代に編纂された歴史書「続日本後紀」によると、「承和4年(837年)に火山活動が起こり、玉造塞の温泉石神で湯が川のように流れ出した」との記録が残されており、これが鳴子温泉の誕生を意味すると考えられています。
温泉宿が開かれたのは江戸時代中期頃と伝えられ、以後東北を代表する湯治場として多くの人々に親しまれてきました。
温泉郷全体で日本にある10種類の泉質のうち7種類が湧き出していることから、同じ温泉地でありながら宿泊施設や浴場によって湯の色や香り、肌触りが異なるのが大きな特徴です。

鳴子系こけしの産地として有名なだけあって、町を歩くとこけし工房やお土産屋さんだけでなく、こけしをかたどったオブジェ、郵便ポストなど…さまざまな場所でこけしの姿を見つけられます。

温泉街の通りの一部は「こけし通り」と呼ばれていることも、鳴子温泉とこけし文化の深い結びつきを感じさせます。
鳴子系こけしの詳細は以下の記事で解説しています。
全国こけし祭りとは?
「全国こけし祭り」は鳴子温泉で年に一度開催される伝統こけしの一大イベントで、その始まりは戦後間もない1948年(昭和23年)とされています。
当初は「鳴子こけし祭り」の名称で始まり、1953年(昭和28年)に現在の「全国こけし祭り」へと改称されました。

鳴子系だけでなく、津軽系・南部系・木地山系・蔵王高湯系・山形系・肘折系・遠刈田系・弥治郎系・作並系・土湯系・中ノ沢系など、東北各地に伝わる伝統こけしが集結します。
例年9月上旬の週末に開催され、祭り前夜には鳴子温泉神社で「こけし供養祭」が営まれます。そしてその翌日から、こけしの奉納式や製作実演、展示販売、こけしコンクール、絵付け体験など、さまざまな催しが行われます。
「鳴子漆器展」も同時開催され、鳴子温泉が誇る二つの伝統的工芸品を一度に楽しめるのも特徴です。
大切にされてきたこけしを送る「こけし供養祭」
全国こけし祭りの前夜祭にあたる行事が、鳴子温泉神社で行われる「こけし供養祭」。
供養祭では、割れたり傷んだりして全国から寄せられたこけしを供養します。それと同時にこけし文化の継承と業界の発展を願う大切な儀式でもあります。
SNSでよく目にする「たくさんのこけしがお焚き上げされる儀式」はこの「こけし供養祭」の一幕です。
各地のこけし工人による製作実演や展示販売
全国こけし祭りの大きな魅力の一つが「各地のこけし工人による製作実演と展示販売」。
ひと口に「伝統こけし」といっても、頭や胴の形、表情、髪の描き方、胴体に施される模様などは系統によって大きく異なります。同じ系統に属するこけしでも、工人ごとに筆遣いや表情に個性が表れるためまったく同じものはありません。

会場内では様々な系統のブースが設けられ、多くの人達が思い思いに自分のお気に入りの一体を吟味していました。

系統による違い、工人による個性の違いは先に述べたとおりですが、現地でこけしの表情・模様の具合を見てみると、同じ工人の作品でも筆の乗り方などで表情が違ったりして同じものはひとつもなく、更なるこけしの奥深さを感じました。
一つとして同じものがないということは、購入を悩んで他ブースを見て再度戻ってきてももう同じものはないかもしれないという…都度決断を迫られる中々にシビアな販売会でもあります。

ろくろを回して木地を削る様子や、細い筆を使って表情や模様を描く姿を間近で見学できることから、完成品を見るだけでは分からない工人の繊細な技術に触れることができるという意味でも「全国こけし祭り」はこけしファンにとって貴重な機会となっていて、さらには気に入ったこけしを工人本人から購入できることもあり、会場には愛好家が列をつくるほどの人気で、初来訪でしたがその人の多さに少々驚きました。

上の画像は全国各地の小学生が絵付け体験で制作したオリジナルこけし。様々な小学校の生徒たちの作品も会場内に展示されていました。
伝統と個性が競い合う「こけしコンクール」
さらに各地のこけし工人が制作した「こけしコンクール」の出品作品も展示されています。審査では各系統から受け継いだ形や描彩を踏まえながら工人の技術や表現力などが評価されるようです。

作品は祭りの期間中に展示とともに販売も行われ、会場内では「売約済」の札が掲げられたこけしが散見されました。どうやら先着順販売のようだったので、次回以降に購入を目論む方はかなり早めに訪れたほうがいいかもしれません…。
最大の見どころは「張りぼてこけし」のフェスティバルパレード
全国こけし祭りの最大の見どころといっても過言ではない!…と思われるのが祭り初日の夜に温泉街で行われる「フェスティバルパレード」。

ワイワイした賑やかな雰囲気に包まれる温泉街のメイン通りは、多くのお店が遅くまで店を開け、駅前の「鳴子温泉ゆめぐり広場」にも多くの出店が出店しています。

「温泉に泊まって浴衣姿で温泉街をぶらぶら楽しむ…」というシチュエーションにはまさにうってつけな日。実際そうやって楽しんでいるであろう人もちらほら見かけました。
そんなこんなで祭りの雰囲気を楽しんでいると程なくパレード開始のアナウンスが…。

先陣を飾るこけし模様の浴衣に身を包んだ「鳴子踊り」の一団が過ぎ去ると…遠くから伝統こけしを巨大化した「張りぼてこけし」が現れ温泉街のメイン通りを練り歩きます。
巨大なこけしが左右に揺れながら通りを進む姿には「かわいらしいこけし」のはずなのに妙な威圧感が…。

その大きさのせいなのか、集団となっているせいなのか…人外のものが迫ってくる、ある種の恐怖感のような感情を抱きつつもその圧倒的インパクトに目を奪われます。

パレードには全身をかたどった張りぼてこけしだけでなく、巨大なこけしの頭から人の体が伸びたように見える「顔ぼてこけし」も。「巨大なこけしの頭から下は普通の人」という姿は伝統工芸の祭りとは思えないほどシュールです。
張りぼてこけしと顔ぼてこけしの「中の人」は一般公募で選ばれた参加者が入れるということなので、機会があったら自分がこけしになってみるのも貴重な体験かもしれません。

フェスティバルパレードでは巨大こけしの行列に加え、こけし模様の浴衣をまとった人々による「鳴子踊り」、沢山の提灯をともした「万燈神輿(まんとうみこし)」なども披露されます。

例年の事なのかはわかりませんが、この年は仙台の郷土芸能「仙台すずめ踊り」も披露されていました。
まとめ
祭りは途中からかなり強い雨に降られてしまいましたが、人々の熱気は冷めることなくパレードは無事最後まで執り行われました。
参加者の皆さんは大変だったと思いますが…雨の中の神輿渡御もかなり絵になる素晴らしい光景。

役目を終えたこけしに感謝する供養祭、工人による奉納式、伝統の技を間近で見られる製作実演、各系統の作品が並ぶコンクール、そして巨大な張りぼてこけしが温泉街を進むパレード…。
普段からこけし尽くしの鳴子温泉が、年に一度だけ更に輪をかけてこけし尽くしになる数日間。こけしに興味がない方でも、温泉街全体に活気が溢れるこの日に狙いを定めて宿泊に訪れれば楽しめること間違いなしです。
全国こけし祭り<Information>
- 名 称:全国こけし祭り
- 公式URL:全国こけし祭り公式HP
- YouTube:全国こけし祭りYouTubeチャンネル
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