
植物の環境適応を支える成分を酵母でつくる。南相馬のWAKUがグルタチオンの生産・回収を実験で確認【福島県】
福島県南相馬市に本社を置く株式会社WAKUは、2026年10月27日、分裂酵母(学名:Schizosaccharomyces pombe)を使ったグルタチオンの生産・回収を実験的に確認したと発表しました。
グルタチオンは植物や動物、微生物などの細胞内に存在する物質。WAKUはこの成分を活用した農業資材「WAKUFUL(ワクフル)」をすでに展開しています。
今回の発表は、農業資材にも活用されるグルタチオンそのものを分裂酵母で生産する技術の研究成果。グルタチオンの用途と、今回の研究で確認された内容を紹介します。
グルタチオンは何に役立つ物質?
グルタチオンは、グルタミン酸・システイン・グリシンという3種類のアミノ酸からなる物質です。細胞内の酸化還元状態の維持や、環境ストレスへの応答などに関わっています。
植物にとっても、根の形成や光合成、養分吸収などに関わる成分です。
WAKUが展開する「WAKUFUL」は、グルタチオンを含むバイオスティミュラント。植物が本来持つ働きを引き出し、生育を支えることを目的とした農業資材です。
同社は「WAKUFUL」に含まれる酸化型グルタチオンが植物に還元型グルタチオンの合成を促し、植物が本来持つ環境適応の仕組みを補助するとし、製品の特徴として高温・乾燥などの環境ストレスへの対応、根張り、光合成、養分吸収の改善を挙げています。
農業資材の展開に加え、グルタチオンの生産技術を開発
「WAKUFUL」は今回の発表以前から展開されている製品。今回の研究はグルタチオンを農業に利用する取り組みに加え、グルタチオンを生産する技術そのものの開発を進めたものです。
微生物を使った物質生産では、微生物が細胞内で物質を合成する働きを利用します。目的の成分を生産するように微生物を培養し、得られた成分を回収して利用する仕組みです。

WAKUは分裂酵母の菌株開発や培養、物質の回収に関する研究を進めており、今回、分裂酵母を培養して得られた試料を分析しグルタチオンの生産・回収を確認しました。
なぜ「分裂酵母」を使うの?
パンやビールの製造で知られる出芽酵母は親細胞から芽が出るように増えます。一方、分裂酵母は細胞の中央に仕切りを作り、二つに分かれて増える微生物です。

分裂酵母は生命科学の研究で広く使われてきましたが、出芽酵母と比べて産業利用は限られています。WAKUは出芽酵母とは異なる分裂酵母の代謝機能に着目し、高機能素材の生産に活用する技術を開発しています。
なお、分裂酵母がグルタチオンを合成すること自体は過去の学術研究で知られています。 今回の発表はその能力を実用的な物質生産につなげるための研究開発の進展として位置づけられています。
同社はグルタチオンの生産技術の開発に加え、分裂酵母が持つ生合成経路を利用した新たな分子の探索・開発にも取り組む方針です。
南相馬で研究、花巻で農業資材を製造
WAKUは南相馬市の研究拠点で植物の栽培試験や土壌分析、分裂酵母の育種・培養などを行っています。既存製品であるWAKUFULの製造は岩手県花巻市の拠点が担っています。
同社は今後、グルタチオンの生産効率の改善、培養規模の拡大、品質の安定化、生産コストの低減に取り組むとしています。
さらに農業分野での研究開発を起点に、食品、ヘルスケア、化粧品、医薬品などへの応用可能性を検討する方針で、今回の成果は実験段階の確認であり、産業化に向けた技術開発が引き続き進められます。
株式会社WAKU<Information>
出典:株式会社WAKUのプレスリリース、株式会社WAKU 技術紹介、株式会社WAKU 研究開発
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